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Re: 煉獄−業火の女王− ( No.18 )
日時: 2010/04/03 22:07
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

第十五話−二人−

「・・・・あれ?」
茜は真っ暗な場所で目を覚ました。
どこまでも、どこまでも真っ暗な場所。
「私・・・・さっきまで何してたんだっけ・・・・」
首を傾げながら茜は前と思える先を歩く。
しかし何処まで行っても闇が続くだけである。
「・・・・・・・・・」
無言で、ただひたすら歩いていると声がした。
<・・・・こっち・・・・・こっちよ>
声の聞こえる先へ歩くと、一瞬にして視界が明るくなる。
今度の場所は、玩具部屋のようだ。
くまのぬいぐるみ。木馬。積み木。投げ輪・・・・。
子供が喜びそうな玩具がたくさん置いてある、可愛い部屋だ。
「ここ・・・・」
茜は何かデジャヴを感じた。
昔、この部屋に来たことがある気がする。
なんとなくだがそんな感じがするのだ。
「こんにちは、茜。久しぶりね」
後ろから声がしたので振り返ると、何とも幼い子供が立っていた。
5、6歳くらいの少女だ。
「・・・ごめんなさい。私とお譲ちゃんは一回会ったことがあるのかな?」
久しぶり。ということは、随分昔に顔を合わせたことがあるということ。
しかし少女の年齢からしてそう昔とも考えられない。
「?いっつも会ってるじゃない」
「・・・・いつも・・・・・?」
そうよ。と言って近くの木馬にまたがる少女。
「いつも会って、沢山お喋りしてるじゃない。昨日もお喋りしたよ?忘れちゃったの?」
木馬を大きく揺らして問いかける少女。
茜は身に覚えがないので、肯定も否定もできない。
「・・・・あ、そっか。茜は覚えてないのね」
少女は思いついたかのように声を上げた。
「覚えてない・・・・じゃないよね。覚えられないんだもんね。ごめんね?」
少女は木馬をゆするのをやめて茜の手を握る。
「茜はきっと今日のことも忘れるだろうけど、明日もまた会えるよ。
 その時はまたいっぱいいっぱいお話ししようね?約束だよ、茜」
そこまでで、意識が遠退いていった。


「・・・・ね。あか・・・・。茜!!!」
目を覚ますと、暁が心配そうな顔をして顔を覗き込んでいた。
「・・・・暁・・・・?」
「何じゃ。大丈夫そうじゃのう」
「・・・・?どうしたの?」
「魘されておったぞ。あまりにも苦しそうにしておるから心配して居ったのだ。
 何か悪い夢でも見たのか?ん?」
安心させるためか、暁は茜の頭を優しく撫でる。
「・・・・夢、見てたのかな。忘れちゃった」
「見ていた夢を忘れたのか?相も変わらず、頭の弱い奴じゃのう・・・・・」
くすくす笑いながら暁は茜の頭を撫でるのをやめる。
茜も、その仕草がおかしくて笑う。
「・・・・また何か悪い夢を見れば申すが良いぞ。添い寝の一つでもしてやるからの」
「ふふ。ありがとう」
茜は、やはり覚えていなかった。
先程の夢のことを。先程会った少女のことを。
・・・・・・・少女がどんな顔をしていたかも。