ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.2 )
- 日時: 2010/03/20 14:19
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第二話−出会−
「茜!あんた今日日直でしょ?」
「え?ぇえ?!そうだっけ??!!!」
「そうよ!何言ってるのよ、もう。本当に少し抜けてるんだからあんたって子は・・・」
「ぅう・・・・仰る通りですぅ・・・」
人の居なくなった三階の教室で二人の女生徒がじゃれ合っていた。
「じゃあちゃんと日誌を先生に届けるのよ?」
「わかってるって!じゃあバイバイ!!笑ちゃん!!」
手を大袈裟にふり、少女、笑に別れを告げたもう一人の少女、茜は日誌を持って廊下を走る。
職員室に行って、担任に日誌を渡せば日直の責務を全うできるからである。
『急いで持って行って、笑ちゃんに追いついて一緒に帰れないかなぁ・・・』
そう考えながら突き当たりの角を曲がる。
するとそこで、不思議な光景を見た。
「・・・ぐにゃぐにゃだ・・・」
角を曲がればそこは一階に続く階段が在る筈だった。
なのにそこにあるのはぐにゃぐにゃの渦。
周りの光景が渦巻いてブラックホールの様だ。
『・・・未来の便利屋ロボットが置いていった異次元に繋がる穴か何かかなぁ・・・・・・』
少し頭の弱い茜はそんな宇宙的考えを巡らせていた。
が。そのブラックホールもどきに異変が起きた。
「?中から音が聞こえる・・・・・・・」
穴の中から何かが這いずり回っているような音が聞こえてくるのだ。
茜がじっと聞いていると、音がぴたりと止まった。
「?」
ずるり。
穴から白くて細い手が伸びてきた。
「っきゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
茜は猛ダッシュでもと来た道を逆走した。
「っな、何?!何なの?!!!今の!!!」
しかし答えてくれる人などおらず、茜は片手に持ったままだった日誌を思い出し、
遠回りして職員室まで言って担任に渡し、すぐに家への帰路についたのだった。
「ふぅ・・・怖かったぁ・・・・・・・・・・。何だったんだろう、アレ」
まだ泣いている心臓を落ち着かせながら自室に入る。
鞄を勉強机にかけ、制服を脱ぎながら私服に着替える。
「・・・・まぁいっか。別に」
そう思っていると、後ろの窓の方からカタカタと音がした。
「?窓閉め忘れてたかなぁ・・・・」
茜が後ろをくるりと振り返る。
窓の向こうに、人がいた。しかしおかしい。
茜の部屋はニ階にあるのだ。地上二階に。ベランダどころか、足場になるようなところもない。
人と思わしきソレは窓に手をつけこちらを見ている、と思う。
髪が顔を覆っていて見えないのだ。
「っ・・・・・・・・・!!!!!!!」
驚きで声が出ない。足が震えて立ってもいられない。
『に、逃げなきゃ・・・・』
床を這って歩き、扉の前までやってくる。
ドアノブを必死に回すが中々開かない。
『何で開かないの?!何で、何で??!!!』
ピキ・・・・・・。
何かがひび割れた音が部屋に響いた。
ゆっくり、ゆっくりと後ろを振り向く茜。
窓の方に視線をやると、人が手をついた所からひびが広がっていく。
ピキ・・・・ビキ!!
耳障りな音がしたかと思った瞬間、窓がもの凄い音をたてて砕け散った。
ガシャァァァァァァン・・・・・・!!!
破片が周囲に飛び散り、その人が無くなった窓の枠から部屋に入ってきた。
「・・・ぅ・・・・ぁあ・・・・・」
歯がかみ合わず、声がうまく出せない。
燃え上がる炎のような赤い長い髪を持ったその人。
赤と黒で彩られたドレスを着こんでいる。
その髪の間から見える金色の瞳が恐ろしい。
「・・・・・・・そなた、人間か?」
その人が茜に向かって話しかける。
「っ、そ、そうですけど・・・・・・・」
扉を背に茜はその人と対峙する。
「ほう・・・・・人間か。こっちも向こうとあまり変わりは無いのじゃな」
キョロキョロとあたりを見渡す。
声の高さと、見た目から判断して、女の子だろう。
「・・・・ところで人間」
「っ!!」
少女は茜の方にぐるりと顔を向ける。
「そなた、我があの穴から抜け出る様を見たであろう?」
「ぅえ?!穴?!」
穴と言われて思い出すのはあのぐにゃぐにゃのブラックホールもどきである。
「ぇ、ええ・・・・みました、けど?」
茜が少し疑問気味に答えると少女はふぅ、と溜め息を吐く。
「そうか。アレを見られるのは非常に困るのじゃ。・・・・・よし人間」
「っはい・・・・・?」
「そなた、口封じのために死ね」
可愛らしく笑う少女の言葉がよく茜には分からなかった。