ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 煉獄−業火の女王− ( No.3 )
日時: 2010/03/19 21:50
名前: 紺 (ID: zCJayB0i)

第三話−異質−

「ん?どうした人間。我の言葉が聞こえなかったのか?」
少女は笑ったまま茜に近づく。
「ぇ、ぃゃ、・・・ぁ・・・・・・」
カチカチと奥歯が鳴る。
「我が死ねと言ったのじゃ。早う死んで見せぬか」
さも当たり前のように言う少女に、恐怖心は募るばかりだ。
「・・・・・・出来ぬというのか」
急に下がった声色にびくりと肩を跳ねさせる。
「ほんに我の期待を裏切るのが好きじゃのう、蛆虫共が。
 ・・・・・これはキツイ灸を据えてやる必要があるようじゃな」
そう言った少女は茜の首をグッと掴む。
「ひっ・・・・・・・!!」
「光栄に思うがよいぞ、蛆虫。こちらの世界での初めて我の裁きを受けられるのじゃからのう」
こちらの世界・・・?裁き・・・・?
何を言ってるの・・・・・・この子は・・・・・。
「ふふ、死ね。蛆虫め」
『殺される!!!!!!!!』
覚悟を決めてギュッと目を閉じる。が。
『・・・・・・・あれ?』
いくら経っても待っている衝撃が来ない。
目を開くと少女がキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「・・・・そなた、本当に人間か?」
少女が至極不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「はぁ・・・・一般市民、ですが・・・・・・・」
そう答えると少女はふむ。と考え込む。
「こちらの世界では我の力は使えないというのか・・・・?」
一人でブツブツ呟いている。と。
「ミャアァ」
窓の外の塀の上に猫が歩いていた。
「・・・・実験してみるかの」
窓の傍まで寄って、少女はパチンと指を鳴らした。すると・・・・。
「ギニャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
外から断末魔の声がして慌てて身を乗り出す。
「っひぃぃぃいいいぃぃいぃ!!」
さっきまで生きていた猫が焼死体と化していた。
『何なのこの子!?』
怯えていると、少女がくるりと振り返る。
「・・・・・どうやらそなただけが異質な存在らしいのう。
 人間、名は何と申すのじゃ?」
急に尋ねられたので、少しの間が開いてしまう。
「ぅ・・・・ぇと、あ、茜・・・・・・・です」
語尾が小さくなってしまう。
「茜と申すのか・・・・・。良い名じゃのう。我の名と同じ、赤い色じゃ」
そう言った少女の表情が、少しだけ和らいだ。
「我の名はスカーレット。煉獄の王、スカーレットじゃ。覚えておくが良いぞ?茜」
ふふん。と笑った少女、スカーレットに茜はただただ感嘆の息を吐くだけであった。