ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.5 )
- 日時: 2010/03/20 14:18
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第四話−名前−
「す、スカーレット・・・・・・?」
茜がおどおどしながら尋ねると、スカーレットはぴくりと眉を動かした。
「調子に乗るなよ、蛆虫め。地に這い蹲るしか出来ぬ虫けら如きが、我の名を呼び捨てにするでないわ」
ぎらり、と金色の瞳が輝いた気がした。いや輝いた。
「っ・・・・・・すみません・・・・・・・」
「分かればよいのじゃ。聞き分けの良い子は我は好きじゃからのう・・・・・・」
良い子良い子。とでも言うように頭をよしよし撫でるスカーレット。
明らかに自分より年下の女の子に頭を撫でられて、茜は複雑な気持ちになっていた。
「じゃあ、スカーレット・・・ちゃん?」
「何じゃその呼び方は。却下じゃ」
しっしと手を振るスカーレット。
「・・・・スカーレットさん?」
「ぅ・・・・そうそなたに呼ばれると背中に悪寒が走って気持ち悪いのう。却下じゃ、却下」
無い頭をフル回転させて考える茜にスカーレットは提案する。
「何じゃ。<スカーレット様>と様付で呼べば良いではないか」
「ぇ・・・・流石に年下を様付で呼ぶのは・・・・・・・ちょっと、ねぇ・・・・」
「?年下・・・・?」
茜の言葉にスカーレットは目をパチクリと開いて不思議そうにしていた。
「?10歳くらいでしょう?」
「・・・・どうなのじゃろうな・・・・・・。我も良く分からぬのじゃ。
あそこは時の流れなど皆無じゃからのう。我がいくつなのか、考えたこともなかったわ」
スカーレットのそのときの顔が猫のように見えて、茜は少し可愛く思った。
やっぱり子供じゃないかなぁ・・・と思いながら見ていた。
「・・・・・暁、じゃダメかな」
茜がふと思いついたように言った。
「はあ?暁とな。スカーレットの一文字も掠らぬではないか」
呆れたように茜を見るスカーレット。
「スカーレットって赤色って意味があるんでしょ?だから赤ね?
それから目の色が金色で御月様に見えるから月で赤月になるでしょ?
それを更に変換したら暁になるから、暁!暁なら本名じゃないから呼び捨てでも許せるでしょ?」
茜が無邪気に笑いながらスカーレットに詰め寄ると、観念したかのように溜め息を吐いた。
「分かった。そなたの言い分も一理あるし、それで我慢するとしようかの。
ならその名で我を呼ぶことを許可しようぞ、茜」
「・・・・うん!暁!!」
微笑ましい空気が漂う中、茜は大変なことを失念していた。
スカーレットはただの少女ではなく、煉獄の王ということを・・・・・。