ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.7 )
- 日時: 2010/03/20 17:28
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第五話−女王−
「ほう。この麦茶とやらは中々に美味じゃのう」
「そうでしょ?あ、緑茶は今切らしてて無いんだよね・・・」
ほのぼのとしながら茶を啜っていた。が。
「ところでさぁ・・・」
茜が空のコップを片手に一言。
「暁は何処から来たの?見た感じは外国の人みたいだけど・・・・ハーフ?」
そのコップに麦茶を注いで、スカーレット、もとい暁に渡す。
「ん?初めて顔を合わせた時に申したであろう」
「・・・・そうだっけ?」
えへへ。と笑いながら自分の分にと麦茶を注ぐ。
「そうじゃ。・・・・茜よ。そなた、頭が弱い部類に入るのか?」
「う・・・・。よく皆にそう言われる・・・・」
「ふふ。まぁ良い。小賢し過ぎても、我の勘に触るだけじゃろうて」
そう言いながら、暁はコップの中の最後の一滴を飲み干した。
「我は煉獄の王。業火によって罪人を裁き、罪を拭い落す使命を司った王じゃ。
・・・・もっとも、我が業火を耐え抜き、清き魂となって天に召された者など居らぬがな」
コップを出した小さな丸テーブルの上に置くと、暁は指から小気味いい音を鳴らそうとする。
「っ!!」
さっきの猫を思い出す。
自分もあの猫のようにされてしまうのだろうか・・・。
びくびくしていると、暁はくすりと笑いながら言った。
「安心するが良いぞ。そなたには我の力は効かぬらしいからのう」
ホッとした。ならさっきの行為に何の意味があるというのだろうか・・・。
「・・・ふふん。そなたはまだまだ幼子の様じゃのう。分からぬのも無理ないわ。
これは娯楽の一環よ。たまには一服せぬとやっていけぬというものじゃ」
そう言って今度はしっかり指を鳴らす。と。暁の手の内に煙管が現れた。
「!!・・・た、煙草?!」
「?違う。これは煙管じゃ。何じゃ、そのたばことやらは・・・・」
いや、実質的には同じなんですよ。
「・・・・・ふぅ・・・・・・・・・・」
瞬く間に部屋に白い煙を充満させる。
「・・・・のう茜」
「ん?どうしたの?暁」
ふと顔を上げれば、床に寝そべった暁がじっとこちらを見ていた。
「そおなたの周りに不審な者は居らんかのう」
「?不審な者?」
強いて言えば暁かな?と言えば目だけで殺されそうなほど睨まれた。
「そういう不審な者ではない。・・・・何と申せばいいのかのう・・・・」
うむ・・・・。と頭を抱え込んだ暁に茜はにこにこしながら言う。
「思いついた時でいいんじゃないかなぁ。まだまだここにいるんでしょ?」
急ぐと碌な事ないよ〜。と呑気なことだ。
「・・・・そういうそなたも、色々な意味で不審な者じゃのう」
「へ?私ごく一般市民なんだけどなぁ・・・・」
「そうであろう?何者かも分からぬ・・・ことは無いの。自己紹介も済ませたし。
我をここに置くのじゃぞ?恐れることは無いのか?」
「何で?」 「・・・・・・・・・・・」
そんな茜に暁ははぁ・・・。と溜め息を吐いた。
「まあ良いわ。茜。腹が減った。何か持ってこい」
「え?あ、うん」
お煎餅あったよね〜。と言いながら駆け下りる音が聞こえる。
その音を聞きながら暁は呟く。
「そなたのその心は好奇心か、恐怖の果ての無心か、それとも・・・・・・・・・」
そこまで言って言葉を噤む。
「ふっ。まあ良い。時間はたっぷりあるからのう。じわじわと本質を見極めるとしよう」
口に含んだ煙をまた吐き出す。
「我は王じゃからのう・・・・・・・」
その言葉に、他意は無かった。