ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.8 )
- 日時: 2010/03/20 18:38
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第六話−通信−
「じゃあ暁は床で寝てね」
「・・・・ちょっと待て、茜」
夜も更けてきたので、茜は御客様用の布団を敷いて暁にここで寝るように促す。
が。暁は不服そうに顔を歪め、茜に待ったの声を上げたのだ。
「どうしたの?布団慣れてないの?」
「そう意味ではないわ!何故我がそなたのような愚民に見下されなければならぬのじゃ!!」
「見下す?何言って・・・」
そういって自分の居る場所に気づいた。
自分はベッドの上に座っていて、暁は布団の上に座っている。
どう頑張っても暁は茜を見上げなければならない。
それが暁にとっては酷く屈辱的なのだろう。
「・・・・じゃあ暁がベッドで寝る?」
「当然じゃ!愚民は愚民らしく床に這い蹲っておればよいのじゃ!!!」
頭にきているらしい暁は愚民愚民と連呼している。
茜は腹を立てることもなく、にこにこと笑っている。
「じゃあおやすみ・・・・って言いたいところなんだけど、暁その格好で寝るの?」
「?これ以外に召す物など持っておらぬ」
高く見えるドレスのまま布団に潜ろうとするので、茜はクローゼットの中をあさる。
「はい。これ、私のサイズ小さくなったポロシャツだけどパジャマに使ってよ」
「ほう。パジャマとな。まあ着てやらんこともないかのう」
そう言ってするするとドレスを脱ぎ、ポロシャツを着こむ。
「はい。今度こそおやすみなさい!」
「うむ。おやすみ」
そうして、部屋の明かりは消されて闇と静けさの支配する場所へと変化した。
「・・・・・・・」
時計の長針と短針が合わさる時刻、暁は目を覚ました。
月明かりだけが光として入ってくる部屋に、火の粉のようなものがヒラヒラと舞っている。
「・・・何の用じゃ?ルーヴェンよ」
暁がそう言うと、火の粉が一つに集まり大きな火の玉となった。
その火には一人の男がゆらゆらと映っている。
≪お久し振りでございますね、スカーレット様≫
「こちらの世界では暁と呼ばれて居るがのう」
不思議なこともあるもので、その火の玉からは熱は発生しておらず。
その真下で寝ている茜も未だ夢の中だ。
「・・・して。態々そなたが連絡を寄こしてきたのだ。何かあったのだろう?
我が宮殿内で何か起こったか?それとも・・・」
暁はにやりと笑った。
「<あの者>の行方でも掴めたのか?」
その問いにルーヴェンは答える。
≪いえ?あの者についての情報は何も掴めておりません。
・・・しかし、スカーレット様の足元でお眠りになっているお嬢さんのことなら≫
「・・・・ほう、それは興味深いのう」
ルーヴェンはにやにやしながら言葉を続けた。
≪本条 茜・・・と仰るようですね。茜さんは、昔ある女に会ったことがあるそうです≫
「・・・・ある女・・・・」
≪その日から、茜さんの性格が一変したようです≫
「一変?どういう意味じゃ」
≪昔は元気で、自分の意見はしっかり上げ、頭も良かったらしいのですが・・・・≫
「今では内気で、自分の意見もそこそこ、頭の弱い子供・・・・か」
そういって暁はふっと笑った。
「大体のことは分かった。褒めてつかわすぞ?ルーヴェンよ」
≪有難きお言葉、頂戴いたします≫
そう言ってルーヴェンは頭を垂れる。
≪スカーレット様≫ 「何じゃ」
≪・・・・貴方が地上に行かれた理由が、娯楽を求めるだけではないということを。
どうか忘れることのなきように・・・≫
「ふん。当然じゃ」
そして火の玉はすうっ。と消えて行った。
「・・・ある女、のう・・・・・・・・」
暁は足元に寝ている茜に目をやる。
「その女が、我の探す者なら良いのじゃがのう・・・・・」
茜は、ただただ安らかに眠っていた。