ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 女神様は悪魔(オリキャラ♂(特に!)・♀募集中!) ( No.9 )
- 日時: 2010/03/26 20:26
- 名前: レオ (ID: F35/ckfZ)
第弐話「幸福の町」
「何者だ…」
「ん?あぁ、道に迷ってね。ここはどこだい?できれば宿に泊めてもらいたいんだけどね」
「俺に気配を悟られずに近づく…。並大抵の者ではない」
そして、右に隠すようにしている女は「誘惑の悪魔」ではないのか?
「あぁ、まぁ軍人だったからね」
「何軍だ?」
「フランスだけど…」
「敵…」
フランスと聞いた途端に態度が変わった。そして、愛用の武器である短剣を握りしめる。
「なっ、何だい?そんな物騒なもの突き出して…」
「貴様か?誘惑の悪魔と手を組んだのは」
右に隠れている女を顎で指す
「誘惑の悪魔?あぁ、俺らの軍が狙ってたやつね。そいつ、違うよ。俺の女」
ヤッバいね…。ここまで鋭い奴がいるとはねぇ…。
「本当か?」
近づき、深く被っているフードを取ろうとした。その時、
「あ!シードさん!!町長が呼んでますよー!!」
「…そうか」
あと少しで正体が解るというところだったが…。町長が呼んでいるのなら仕方ない。行くか。
「?何か怒ってませんか?ボク、何か悪いことしましたか?」
「いや、何も…」
「あ、こんにちは!お客さんですか?どうぞこちらへ!!」
「ありがとう。名前は何て言うんだい?」
「ボクですか?ボクはニィです!で、あちらの方がボクが尊敬しているシードさん!!」
「シードねぇ…」
聞いたことあるね。確か裏ではかなり名の高い暗殺者だろ?そいつの抹殺計画もあったんだけど、中々実行されなかったんだっけ?
「お知り合いですか?」
「ん、別に…」
「ねぇ、そこの女の人、フード取ったらどうですか?お日様が気持ちいいですよ!」
「そう。今日は日が心地よいのね」
静かで優しい声。今までの少し低めで澄んだ声とは違う。そして、無謀にもフードを取った。
「へ?あっ!バッ!」
「馬鹿」と言いかけて止めた。そこにいたのは茶髪で右に1本の三つ編みを垂らした可憐な少女。澄んだ青い瞳を持つ美女がいた。今までの容姿とは全然違う姿に驚いた。
「うわぁ、凄く綺麗な人だ…。天使みたい!」
「女神」というには幼すぎるし…。「天使」がぴったりだと思う。
「有難う。ねぇ、ここはどこ?私達は道に迷ってしまったの」
「ここはバルニール。世界で唯一戦いのない平和で幸福な街です!ねぇ、天使さん。名前はなんていうの?」
「私はキリア。こちらの方はディアさんと言うのよ」
「そうですか!キリアさんにディアさん、ゆっくりしていって下さいね!」
「ども」
軽く頭を下げる。
「なんか素っ気ないですねー。ねぇ、どんな旅をしているんですか?ボク、ここから出たことなくて…」
「そうかい、それは幸せ者だね。ここ以外の場所は幾多の者が血を流し、幾多の者が苦しみ、嘆き…。こんな場所があるのが信じられないくらいさ」
「そうか…。そんな人たちにボクのハープを聴いてもらいたいな…。そうすればきっと落ち着ける」
「ふーん。でも、アンタも辛い思いするよ?それでもいいのかい?」
「いいんです!ボクがいくら辛くて、同じく辛い思いをしている人がいる…。そんな人達みーんなにハープを聞いて和んでもらいたい…。それがボクの願いです!」
「そんな考えじゃ、戦場じゃすぐ死ぬよ」
戦場に「和み」や「幸せ」なんてない。ただ永遠の苦しみと悲しみがあるだけだっつの。なんでそんな現実逃避した考え方するかね?
「大丈夫です!そしたらキリアさんが生き返らせてくれますよ!」
キリアの手を取ってくるっと一回転した。
「はぁ?CO…。じゃなくてキリアがそんなことできるわけないっつの」
なんか無性に腹立たしいね…。コイツがそんな考えの持ち主だから?まぁ、そんなことどうでもいいね。軍にいたおかげで感情を押し殺すのが得意になったよ。
「私にできることがあればさせていただくわ」
「はいはい、キリアちゃんも大人しくて引っ込み思案で何でも人の言うこと聞くいい子だね」
「ねぇ、ボクを仲間にしてくれませんか?」
「はぁ!?アンタみたいな武の心得もないような…」
「武?武なら大丈夫ですよ!シードさんは強くて賢い方ですから!!」
「でもねぇ…」
その敬愛なるシードさんは俺らのこと信頼してないっつの。
「問題なんてありませんよ!シードさんはあれでも仲間を大切にする人です!この前だってお腹を空かせてた女の子にパンを分けてあげてましたから!!」
「そうかい、勝手にしなよ」
アンタがしたいようにすればいい。きっと戦場の辛さから逃げ出したくなるっつの。嘗めてかかると痛い目にあうよ?
「ニィ…。何を勝手に決めている」
「あっ、お帰りなさい!ボク、今日からこの人たちと世界中を旅することにしました!シードさんも付いてきてくれますよね?」
「そんな信用できない輩…」
「大丈夫ですよ!ディアさんは賢くて強そうだし、そっちの女の子、キリアさんは優しくて賢くて強そうです!きっといい仲間になれますよ!」
「!」
俺が「誘惑の悪魔」と勘違いしていたのはただの女か…。それなら問題はない。
「あぁ。ニィが行くなら俺も行こう」
「やったぁ!じゃあ、これからボクらは仲間です!ヨロシクー!」
楽しそうに笑うニィ。外の汚れた世界を見るというのに…。無垢なものだな。