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Re: 少年アリス ( No.4 )
日時: 2010/03/26 17:59
名前: αкαηё (ID: ZVqxEqci)
参照: 【少年アリス】 俺は死ぬために剣を抜くんじゃない───!

★ 第3章 任務 ★

 「此所に入っておけ!」

 俺は大臣に勢いよく牢屋へとぶち込まれた。

 俺は抵抗もせず、大人しく鍵が閉まるのを目に焼き付ける。

 太陽の光も月の光もない、この場所。

 初めてやって来たが、灯りは蝋燭1本だけか。

 今が夜なのか朝なのかも分からない。

 時間なんて分からない。

 この無の場所で何をすればいいんだよ?

 すると、牢屋の扉がコンコンとノックされた。

 「誰だよ……すまないが、命令は聞かない」

 俺は素っ気なく返事した。

 すると、明るい女の声が聞こえた。

 「命令なんてしないわ、ヴィル」

 聞き覚えのある声。

 彼女は————幼いながらの天才巫女、メリッサ。

 俺の幼なじみだ。

 「そーそ。帰ってきたら牢屋だって言うからさ」

 こちらも聞き覚えのある、明るく元気な男の声。

 彼は、騎士団団長のグレッド。

 俺の親友だ。

 すると、牢屋の鍵がガチャリと開いた。

 「……何のつもりだ、こんな事をして王にばれたら……」

 「あら、王様の命令だもん。ヴィルと任務に行けってね」

 扉の向こうに立っている白いローブに身を包んだ女——メリッサが言った。

 俺は立ち上がり、メリッサに尋ねた。

 「任務は何だ? 今度は誰の暗殺だ?」

 すると、赤黒いスーツに身を包んだ男——グレッドが俺に槍を手渡した。

 「残念だが、王の勅命ではない」

 「じゃあ、誰の——?」

 「ファリグ大臣だ。なにやら大臣も王の変動に気付いているらしい」

 毎日のように王の接近にいる大臣もが不思議に思っている。

 王の変動は確かなものになってきた。

 「大臣の命令はこうだ。『王に何が起こったのかを調べて欲しい』」

 「なるほど、王の変動の理由を探るわけか」

 「しかし、王には気付かれないようにだ。気付かれると終わりだ。何もかも……な」

 確かに、今の王の状況だ。

 あの王ならば、自分を疑った者だけでなく、全ての人々を殺すであろう。

 「しかし、どうやって暴くんだよ。しかも王にバレずにって……」

 「そんなの、王の親友に聞けばいいだろう? 最近、王は親友のところに遊びに行ったし」

 「そんな大雑把な……」

 「いいだろ? 何もやらないよりましだ」

 こうして、俺たち3人は王の親友である、森の奥に住む神父を訪ねることにした。

 「まぁ、とりあえず牢屋から出ろよ。そんなに此所が好きか?」

 グレッドが俺を見て笑った。

 「そんなわけないだろ? ただ……牢屋から出ることで王にバレないかなって」

 それが問題だった。

 王室には牢屋の情報が常に送られている。

 抜け出したのが分かると、兵士達が俺を追うだろう。

 「……ってことは、監視兵に見つからなければいいんでしょう?」

 「当たり前だ。そんなこと分かってる。でも、どうすれば……」

 すると、メリッサはニヤりと微笑んだ。

 「ヴァン。私を誰だと思ってるの? そんなこと、私に掛かればお手の物よ」

 そう言うと、メリッサは不思議な呪文を唱え始めた。

 そうか、メリッサは巫女。

 魔法が使えるのだ————