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Re: 始まりは懺悔の願い ( No.11 )
日時: 2010/03/31 15:58
名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: yL5wamFf)

 二年前

「おはよ、若奈!!」
 明るくて可愛い友達がいつものように手をブンブン振って、走ってくる。
「おはよう、明音ちゃん」
 明音は控えめに、呟くように言ってきた若奈に、二カッと笑いかける。
 そう。
 いつものように。何も変わらない顔で。
「今日も若奈は可愛いね!」
「そう……?」
 小首を傾げ、自信なさそうに聞き返す若奈。
「そうだよ! てゆーか自覚なさすぎ! そろそろ自覚しなさい!!」
 言葉と共に、明音は若奈の髪を掻きまわす。
 そんな明音に困ったように。
「そんなこと、言われても……」
 いつも通りだった。
 明音との対話はいつもと変わらず、変化の素振りなんて感じられなかった。
 明音は、明るくて可愛くて、クラスメイト達の憧れの存在。
 そんな若奈が信じていたものは、あっさり、容易く完膚なきまでにぶち壊された。
 いつもと雰囲気が決定的に違う教室で、明音は。
 明音は、若奈に言う。いつものように、明るく言う。
「どしたの若奈? 顔色悪いよ?」
「……そんなこと、ないよ?」
 自分の口が自分の口ではないように、うまく動かない。それほど、目の前の光景はショッキングだった。
 だって、そうだろう。
 目の前で。
「そっか。ならいいよ」
 明音が。
 信じて疑わなかった、いつもの一日が。
「なら、若奈もやろ? こいつをいじめよう?」
 全く別のものになったのだから。