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Re: 始まりは懺悔の願い ( No.31 )
日時: 2010/04/20 22:28
名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: yL5wamFf)

「あれ……。春奈?」
 教室から出てきた若奈と鉢合わせ。
 若奈は明音と、数人の友人と一緒にいる。誰もかれも、見たことがある顔ばかりだ。
「若奈……」
 口を開いてから、春奈は激しく後悔した。
 げっそりした、気落ちした気持ちが思いっきり出ていたから。当然それに若奈も気付くだろう。
「春奈……どうかした?」
 控えめな気づかい。
 いつもはちょうどいいと思える程度の気づかいなのに。今は、それが痛い。
 若奈と違って惨めで、自己中心的な自分には、痛すぎる。
「何でも無いから」
「そ、そう……?」
 納得しかねている若奈。
「そ。じゃ、教科書は返したから。ありがと、若奈」
 そんな若奈に言葉を投げて、返事も聞かずに背を向ける。
 これ以上、話していたくなかった。
 これ以上、一緒にいたくなかった。
 辛くて、苦しくて仕方なかった。

 始まりの、数週間後

 自分よりも何もかも優っている女性の前で。
 けれど、姉より劣っていると思える女性の前で。
「……こんなのってない。何で……? 何で若奈はこんなことしたの? 何で若奈はわたしみたいな屑にそんなことしたの?」
「……」
 感情が抑えられない。自分への怒りがおさまらない。次の瞬間自分を八つ裂きにしてしまいそうな、そんな感情を抑えられない。
 抑えることなんて、出来ない。
「きっと、わたしのせいだ……!」
 若奈は優しかったのに。
 良い姉だったのに。
 なのに、わたしが——。