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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.37 )
- 日時: 2010/05/05 11:39
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: yL5wamFf)
一年半前
小学六年生のころ。
自分の罪を、考えないようにしていたころ。今もずるいけれど、自分がそれ以上にずるかった時。
「若奈! 今日暇ー?」
教室にはまだ、かなりの人数のクラスメイト達が残り、友人同士の会話をそれぞれの面持ちでしている。
それは、このクラスの一員である、若奈も例外ではなかった。
真っ赤なランドセルの中に、うんざりするほど大量の教科書とノートを入れながら。若奈は右斜め前の席からかかった声に、ゆったりと顔を上げた。
「うん、暇だけど……」
二日前の席替えで本当に偶然近くの席になった友人、明音。
明音はその答えを聞くと、実にうれしそうな顔をして、机の上に無造作に放置されていたピンクのランドセルを軽やかな仕草で背負う。
「じゃあさ、この後わたしの家で遊ばない? 皆忙しいらしいから、二人だけだけどね」
後半、ほんの少し頬を膨らませながら。
さほど珍しくない誘いを若奈は、明音から受けた。
「……うん」
明音への返事に、しばらく時間がかかった。
最近、というか、あの時からいつもそうだった。
明音に言われるがままにいじめに加担したあの時から、いつもそうだった。
名前の通り明るい自分の友人に、若奈はとてつもない恐怖を感じずにはいられなくなってしまったのだ。
それをいけないと思いながら。友人に対して恥ずかしいと思いながら。けれど、自分や明音が悪いことをしたという確固たる事実は消えなくて。
そんなことを考えるために、苦しくて。
「やった! 今日せっかく家に誰もいないのに、若奈が遊べなかったら一人で退屈してたとこだったよ!」
若奈がそんなことを考えているのに、気づいているのか、いないのか。
明音はいつものように、元気に明るく、快活に笑った。
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