ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ロンリー・ジャッジーロ 第二章-6・7 ( No.52 )
- 日時: 2010/05/22 15:28
- 名前: こたつとみかん (ID: q1JDM65v)
- 参照: わかっちゃいるけど^^;
——ふと、アイビーは電動鋸の機動音が消え、手元が軽くなったことに気がついた。これに妙なデジャヴを感じる。刹那、自身の身体に軽い衝撃が走る。地面に落ちた割には衝撃が少ないし、何より地面に足のつま先は付いているのに身体の前方向に衝撃があるというのはおかしい。
アイビーがいつの間にか閉じていた眼を開けると、そこにはヴィルバーの姿はなかった。いや、いなかったわけではない。あまりにもアイビーに接近していたため見えなかっただけだ。
ヴィルバーはいた。空中にいたアイビーを抱き留めているという、戦闘中とは思えない状況でいた。それに気がついたアイビーは少し赤面しながらヴィルバーの腕の中でばたばたと手足を動かし、なんとか腕を振りほどいて突き飛ばそうとしたが、その必要も無くヴィルバーはアイビーを地上にゆっくりと下ろした。
地面に下ろされたアイビーは後ろに下がりながら急になくなったもう一本の電動鋸を探す。見つけた電動鋸は地面に転がっていた。その刃に何か刺さっていて、電源は止まっていた。その刺さっている何かを見て、アイビーは驚愕した。
刺さっているのは、先程ヴィルバーが投げたドライバーと呼んでいいのか判らないドライバーだった。ついさっきまでのヴィルバーを見て、新しく投げられた物ではなかった。——だが、何が起きたのか。武器を無くしたアイビーは魔導で応戦しようと手のひらを開いて構えるが、その腕をヴィルバーが握ったので上手く精神集中出来なかった。
「何を、したんですの……?」
驚愕、絶望、虚無感などが入り混じり、混乱していたアイビーが心から搾り出した言葉がそれだった。
ヴィルバーがアイビーの腕から手を放し、アイビーが力なく腕を下げるのを見て戦闘の意思がなくなったのを確認すると、ヴィルバーは頭を掻きながら話し始めた。
「魔導っスよ。詠唱はしてないっスけど」
ヴィルバーが続ける。
「俺、詠唱を覚えられるほど頭よくないんスよ。でも魔導との相性が抜群によくて、宝の持ち腐れ状態だったっス。魔力も五種類持っていたし。覚えらんないんだったら、いっそ簡単な魔導の精神集中を身体で覚えて、無詠唱で出せばって教えてくれた人がいたんス」
「こんな風にっス」とヴィルバーは電動鋸から刺さってあるドライバーもどきを引き抜き、それを手に持って誰もいないところに下手で軽く投げる。同時にその下に黒い物体——磁石を撒く。そして空中のドライバーもどきに向かって何か念じた。ヴィルバーの魔力回路が灰色に光る。すると、空中にあったドライバーもどきが青く光り、先端から真下の磁石目掛けて勢いよく落ちてきた。——飛んできた、のほうが表現として適しているかもしれない。これは物体を媒体とし、磁力を寄せ付ける物に引き寄せられて飛んでいく『電磁鳥』だ。元々これは移動用の魔導だったが、応用で今回は攻撃手段として使われた。
「さて」
驚愕で言葉を失ったアイビーのことなど気にも留めず、ヴィルバーは刺さったドライバーもどきを引き抜き、順手に持って構える。そして先刻の電磁鳥のように何か念じた。魔力を通したドライバーもどきはその先端から三十センチほどの長さの濁った、お世辞にも綺麗とは言えない青色の雷を発し、それが次第に細く形を整えていった。まるでレイピアだ。アイビーはそう思った。
「けじめは、ちゃんとつけさせてもらうっス」
攻撃的な言葉とは裏腹に、ヴィルバーは今にも泣きそうな表情だった。——やりたくないけど、やるしかない。そんな思いは、言葉にしなくてもアイビーは感じ取れた。
そう感じた瞬間、アイビーの胸に雷のレイピアが突き刺さる。それを受けたアイビーは一瞬にして意識を失い、その場に糸の切れた人形のようにがくんと倒れた。
足元に転がったアイビーの身体を直視しないように空を見上げ、ヴィルバーが声を震わせて言った。
「これで、いいんスよね。……カイさん……」
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おーいえ!
もう五月なのに私の住んでいる地域は寒いです! コールドです!
……駄文はさておき。
言ったとおり、オリキャラ投稿キャンペーンは本日を持って終了です。今まで投稿してくださったright様、羽鳥様、きりお様、あるフィーね様、紫様、どうも有難う御座いました。
どうかあなた方に神のご加護がありますように。なんて、私キリスト教徒じゃありませんけど^^
こたつとみかんでした。