ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第7話  『私』 ( No.176 )
日時: 2010/05/09 12:13
名前: 禰音 鏡幻 ◆akHvV3kiSo (ID: cYSZrqDn)

キン!キン!キン!ギィイィイィン!

曲刀の刃が交わり鋭い金属音を立てる。
2人のロゼは、互いに同じ速さで同じ動きを、
鏡のように続けていた。
恐らくこれは、対魔王に開発された、
ミラーエンドと呼ばれる最高レベルの白魔術だ。
白魔術自体は高等魔法が少なく、
高等魔法は10程しかない。
しかし、黒魔術が通用せず、
相手に相手と戦わせるという黒魔術には無い、
独特の能力を持っているものが多い。
まさに、コレがそれだ。

「何か解除方法あったっけ?」
「何か解除方法あったっけ?」

口まで同時に開き、
同時に同じ言葉を発する。
この魔法の真の狙いは体力を削る事だろう、
こっちから攻撃しなければ私は何もしてこないのが良い証拠だ。

「チョットタンマ」
「チョットタンマ」

……ウゼェ。
私と距離をとり、私を観察する。
そして…見つけた。
鏡ではない部分を!
鏡でないのは胸元にあるペンダント!
取れば私は消える!

「戦闘再開」
「戦闘再開ッ」

あれ?
今なんか多くなかったか?
そう考えているうちに、分かった。
考えを読んでいる!
私は…私自身と戦っている!
同じ動きに加え、考えを読まれ、
そしてその隙を突いて相手が私と同じ身体能力にも関わらず、
確実に攻撃をヒットさせてくる!

「マズイ!非常にマズイ!」
「マズイ!非情にマズイ!」

どんどん、私を読んで進化している!
早く!ペンダントを!
もっと!
もっと!
相手より早く!

グシャア!

首が握り切られる音が周囲を一気に静かにした。
ペンダントを持っているのは…私!
私は…『私』に勝ったのだ。
そんな束の間の安息は一気に覚め、
目の前に広い空間が…否、青い空が広がっていた。

「…何故」

地下へと潜っていたはずなのに……。