ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 怖い話をしませんか? 参照140突破ですね… ( No.21 )
- 日時: 2010/06/14 18:18
- 名前: 桃井 ◆G5Umpuxr/Y (ID: fxK7Oycv)
【第十三怪】 「スカートの中」
その男は弟の友人なのですが、18歳で結婚することになりました。
大工さんの見習いでしたので、お金に余裕がありません。
そこで知り合いの不動産屋に格安の物件はないかと尋ねたところ、あるとの返事。
「・・・・・そやけどな、出るで」
不動産屋のおじさんは幽霊の手つきをしてみせます。
その男も奥さんも、幽霊なぞ信じていないので是非貸してくれとせがんだそうです。
翌日、部屋を見に行くと家具も何も無い部屋の真ん中に、1升瓶がドンと置いてあったそうです。
これは何かと尋ねると、おじさんは黙って一升瓶の封を切り、二人に飲めと言いました。
訳の判らないまま、口をつける二人をじっと見詰めて「味はどうや」とおじさんは尋ねます。
多少無気味を感じながらも、普通だと答えると、おじさんは太い息をつき貸す事を了承しました。
引っ越しは私も手伝ったんですが、部屋が煙って見える程霊気が満ちていました。
吐き気はする頭痛はするで、ひどいものでした。
タンスを運んでいる時、首筋に長い女の髪の毛がずっと触れていました。
振り向かないようにしたけど・・・・・
「この部屋やめた方がいいよ」と忠告したけど、笑っていました。
————で、その夜出たそうです。
早速、新居で睦み合っていると、その男の下で奥さんが動かなくなったのです。
どうしたのかと見てみると・・・・・
旦那の背中越しに天井を恐怖の表情で見据えて金縛りになっているのです。
出たかとそいつが振り返ると、自分の頭のすぐ上に靴下はいた足がある。
見あげると白い服の長い髪の女が浮いています。
そいつは、まず最初に「なんだ、幽霊には足があるんじゃねぇか!」と思ったそうです。
(絵に描いたような無神経!!)
・・・で、次に足があるならスカートの中はどうだろうと思い、ピラリとスカートをめくったそうです。
幽霊の方も流石にこういう反応は予想外だったのか消えました。
それからというもの,奥さんが出たと叫ぶ度、そいつは喜々として走っていってスカートをめくるようになりました。
その度に、幽霊は消えて逃げるということが繰り替えされました。
そのうち,奥さんの方が妙だなと思いました。
幽霊はまず自分の前に現れる癖に、最初に旦那の前には現れない。
いつでも消えることが出来るのに、旦那がスカートめくるまで消えない。
「あの人を待ってるんだ」
そう思った瞬間、悋気が恐怖に勝りました。
次に幽霊が出た時、奥さんは「あの人に何する気よ!!」とつかみかかりました。
ちゃんとつかめたそうです。
向こうも首を締めにきましたが、喧嘩では場数が違います。
馬乗りになりどつきまわしているうちに幽霊は消えました。
以来、幽霊は現れていません。
生身の女性に殴られて退散した幽霊はこいつ位ではないでしょうか。
(なんか,気の毒だ・・・・・)
ちなみに冒頭の一升瓶ですが、おじさんに尋ねたところ、この業界に伝わる儀式で因縁のある物件を他人に紹介する時、前日酒を置いておき、それを飲ませるのだそうです。
「血の味がするとか、生臭いって言う奴は駄目だ」
おじさんはそう言いました。
飲んだ事ありますかと訊くと、「飲むもんか!」と吐き捨てるように言いました。
私はそういう儀式が今も伝わっている事が怖いです。