ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 怖い話をしませんか? 参照190突破ですね… ( No.30 )
日時: 2010/06/21 16:13
名前: 桃井 ◆G5Umpuxr/Y (ID: Gd7LnyXy)

  【第十八怪】  「結界」

高校時代の友人にT嬢の他に二人、奇妙な力を持ったのがいました。

ヤシキと、キジマと言う男です。

ヤシキは小松左京を若くしたような朗らかな男でした。

キジマは「らんま1/2」の五寸釘に似ていましたが、性格はギャグメーカーでした。

この2人は自分たちの力が面白くて仕方なく、力を高めるパワースポット捜しに、夢中になっていました。

この二人が金剛山に入って獣道を分け入って行くと、突然、キジマが二メートル程後ろに弾き飛ばされるようにして、ひっくり返ったそうです。

「どないしたんやッ!?」

・・・とヤシキが助け起こすと、キジマは

「判らん。なんかに突き飛ばされた」

と答えます。

ヤシキは、キジマが立っていた所を観察しました。

二本の杉の巨木が丁度、門のように立っています。

大人が二人並んで通れる程の、隙間に蜘蛛の巣が張ってありました。

女郎蜘蛛が一匹、蜘蛛の巣の真ん中に止まり、二人を睨んでいます。

ヤシキの目には、蜘蛛の巣から、青白い光りのカーテンのようなものが木の間を塞いでいるのが見えました。

ヤシキにしろキジマにしろ、これまで様々な結界を見て来ましたが、蜘蛛の巣の結界は初めてです。

しかも、人一人吹き飛ばす力は尋常ではありません。

ここで引き返すのが普通なんですが、ヤシキは興味が先に立ちました。

女郎蜘蛛が怖いので、少し離れた所を左手のひとさし指で、ちょんと突ついてみました。

電気が走るような衝撃を覚えました。

(これは・・・・・、手に負えん)

そう思ったヤシキは、

「戻ろう」

・・・とキジマに声をかけました。

その時、ヤシキは先程の指先にチクリとした痛みを覚えました。

(・・・なんだろう・・・?)

そう思って見てみると、ひとさし指の爪と肉の間から、黒く細い針の様なものが一センチ程出ています。

(・・・なにか刺さったのかな?)

ヤシキは、それを抜こうとしました。

————その瞬間!肘の付け根の奥の辺りにザワザワとした違和感が走りました。

ヤシキは、血の気が引くのが判りました。

それと同時に、その黒い物が何なのかも判りました。

ヤシキは、慎重にその黒い物を引きぬいていきます。

黒い物は体外に出ると、柔らかになり垂れ下がります。

まるで、神経を引き抜くような悪寒に耐えながら、ヤシキはそれを引き抜きました。

それは美しく長い黒髪でした。

ほんの一瞬、触っただけで、黒髪は針となり、ヤシキの腕の肘まで貫いていたのです。

ヤシキは総毛立つ思いがしました。

いや、本当に総毛立ったのです。

まるで特撮映画のようにヤシキの髪の毛が天に向かって逆立つのをキジマは見たそうです。

その結界の向こうに何がいたのかは、あまり考えたくないですね。