ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 怖い話をしませんか? ( No.7 )
日時: 2010/06/11 20:44
名前: 桃井 (ID: .wPT1L2r)

  【第七怪】  「二階の“それ”」

友人が京都に住んでいます。

築250年は経過している古い家に住んでいました。

昔は間口で税金が決まったので、鰻床の細長い家でした。

その家には二階があったのですが、誰も使っていません。台所が吹き抜けで、天井に窓があり、二階の土壁の障子が台所を見下ろせるようにありました。

京都のライブハウスで遊んで、その家に泊めてもらったのですが、飲み過ぎたのか、深夜に喉が乾いて台所で水を飲みました。

その時、背後に視線を感じました。上からです。

振り向くと、障子がピシャリッと閉まりました。白くて小さな指が確認出来ました。

二階は使っていないと聞いていましたし、その指は子供のものです。

ぞっとしたのは、夜の冷え込みのせいではありません。

天窓も不気味です。異界へ通じる穴のように見えました。

早々に寝床に潜り、翌朝、友人にその話をしました。

友人は黙って二階に私を案内しました。

古い箪笥や箱が並ぶ真ん中に、“それ”はいました。

市松人形です。

年代物で三歳児位の大きさでした。左側の髮だけが背中まで伸び、中途で白髪に変わっていました。表情は老婆でした。

「多分、こいつや」友人はそう言います。

一目で尋常ではないものと分かる代物です。

「なんで、こんなもん、置いとくんや」と訪ねたところ、彼の祖父が一度寺に預けたそうです。ところが、その夜、二階で足音がする。

泥棒かと思ったところ、その市松人形が歩いていたそうです。

人形は一言「捨てるな」と言うと、今の位置で止まったそうです。

「ま、害はあらへんから」友人はそう言って帰ってしまいました・・・・・