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Re: 〜シャットダウン〜Escape nine’s   ( No.19 )
日時: 2010/04/15 18:35
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

Episode final 『暗い少年時代』

「ばーか!!死ねよこのクズ!!」

「そうだそうだ!!お前なんかこの世にいらないんだよ!!」

「死ね」

「死ね」

「死ね」

「死ね!!死ね!!死ね!!死ね!!」

ガバッ

本城はベットからとび起き、息が荒くなっていた。
立方体のベットと洗面所があるだけの部屋。
窓はない。理由は簡単、地下だからだ。
「大丈夫か?」
ドアが開き、明らかに寝起きの河原が本城に声をかけてきた。
「あ、あぁ。それより、地上はどうなってる?」
「ロビーに行けば分かるよ。俺らは今人気者だ。ここだけでな。」
河原は苦笑いをすると、ドアを閉めて先にロビーへと向かった。
本城は立ち上がると、先ほどの夢のことを考える。
「・・・・過去は忘れよう。」
本城はそう言うと、ロビーへと向かった。

**********

ダウンタウン ホテル‘Black’

東京の下にアリの巣のように広がる無法地帯ダウンタウン。
天井には暗闇を照らす電球がぶら下がり、壁には落書きが山ほど書かれてある。
そして、ダウンタウンの東側にあるホテルに2人はいた。
2人はロビーに着くと、壁に置かれている大型テレビを見た。
テレビの前には数人の無法者が群れている。
「あれだよ。俺ら、全国指名手配だとよ。」
河原は指をさして言った。
「Escape nine's?逃げる9人ってか・・・」

『昨日、東京にある村田学園中等学校で殺人事件が起こりました。教頭である原本和夫さん(51)が学校の脇道で射殺されているのが発見されました。現場からは一人の少年が逃げて行くのが目撃されており、警察は今も行方を追っています。さらに、校長室に設置されていた監視カメラにより、犯人は9人いることが判明しました。』

女性アナウンサーが映っている画面から、現在逃げている9人の顔写真が映されてた。
顔写真は白いボードに張られており、そのボードの前にスーツを着た男が立っている。

『ここからは、FBI日本支局リーダーの神永がお伝えします。現在逃げているのは子供が4人、大人が5人。その内2人は警察であり、もう2人は元々犯罪者である人間だ。市民の皆様にはこの顔を目と頭に刻んでほしい。ぜひ、逮捕にご協力を願いたいと思います。』

そして、ニュースは切り替わり、見ていた無法者は2人の方に視線を向けた。
「あんたらすげえな。」
一人の男が本城に言う。
本城は男を見ると、一瞬動きが止まった。
「・・・・すごくはない。」
「どうした?」
河原が本城のちょっとした異変に気付いた。
本城は男の顔を見ると、昔のある記憶が戻る。
その瞬間!!

「俺のことを馬鹿にするなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

突然本城は男の髪をつかみ、そのまま地面にたたきつけた。
男の顔面は地面にめり込み、体はピクリとも動かなくなった。
その場にいた全員が突然の出来事に騒然としていた。
本城は男の頭を蹴ると、その場を後にした。

**********

事件から1日・・・

千種、秀一は住宅街の空き家に身を潜めていた。
2人はあれから飯を食べずに過ごしており、自分たちの状況もすべて把握していた。
「これからどうすんだ?まずは服を着替えないと・・・」
秀一は今着ている制服を見た。
確かに、この服で外を出回るとかなり目立ってしまう。
「服はどうするんだ?」
「俺の家に行こう。」
「はぁ?どうせ警察がいんだろ?てかよ、事情話せば警察も分かるぜ。」
秀一はそう言うが、心の中では現在の状況がおかしいことには気づいている。
警察の動きがあまりにも早すぎる。それに、いきなり全国指名手配は不自然だ。
現場にいただけでこれほどの状況に陥るとは思えない。
それぐらいは中2の千種たちでもわかる。
「とりあえず、これからのことを考えよう。」
しかし、千種は違うことを考えていた。
ほかに逃げたみんなは大丈夫なのか・・・
「前田・・・鏡矢・・・・校長先生。」
ふと、千種が口に出して秀一に向かって言ってしまった。
秀一は千種の言葉に首を横に振った。
「千種、今は自分が一番だ。ほかのことは後だ。」
千種はそう言われると、ほかの人たちのことを頭から消した。

**********

村田学園から北へ5キロ 東京駅

鏡矢、七海、校長の3人は校長の自宅で一休みしていた。
校長が折れた鼻を七海に治療してもらっている間、鏡矢はテレビで今の状況を確認していた。
「先生、時間が経てば警察がここに来ますよ。」
「分かってる。とりあえず、車で遠くに逃げよう。北海道に私の別荘がある。」
「北海道♪」
七海はその言葉で笑顔になった。
恐らく、9人の中で七海だけが現在の状況を楽しんでいる。
鏡矢は椅子にため息をつきながら座った。
「なんで俺らまで・・・・」
「あの子は、たぶん復讐する気なんだ。」
校長はふと、鏡矢と七海に言った。
七海は首を傾げ、校長に質問する。
「復讐?なんで?」
「慶介は、昔頭が悪くて運動神経もゼロの落ちこぼれだったんだ。小学生からいじめにあい、高校までそれは続いた。しかし、あの子が19歳の時ある事件が起こった。」
校長は立ち上がると、窓の外から様子を覗った。
2人は顔を合わせて首を傾げる。
「彼は19歳のときに1日だけ忽然と姿を消し、それからどこかへ通うようになり始めた。そしてその直後に、彼の母であり私の妻である佳代子がガンで他界。あの子は、妻の死が受け止めることができずに部屋にこもり始めた。そしてそれから1年後の母の命日の日に、慶介は銀行を襲い殺人を犯して逃亡。」
校長は窓越しに置いていた車のキーを取ると、2人の方を向いた。
「警察が来た!急ぐぞ!!」
3人は車に向かい、北海道へと目指した。

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善人が犯罪者となり終わる第1部・・・

第2部は9人の逃走劇!!

誰が死に、誰が捕まり、誰が逃げ伸びることができるのか!?

第1部終了!!