ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜シャットダウン〜Escape nine’sお知らせうp ( No.21 )
- 日時: 2010/04/17 15:15
- 名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)
Episode2-1 『最初の犠牲者』
東京と神奈川県の県境 古賀川 諸墓橋
太陽が上がり始めた時間、古賀川の辺りには人気がない。
周りには建物もなく、平地が広がっていた。
そして古賀川に架かる諸墓橋の中央に、一台の車が停車していた。
「う、う〜ん・・・。朝か・・・・」
助手席に座る石田は背伸びをすると、ミラーで自分の顔を見た。
口の周りには髭が伸び、髪もボサボサ。ネクタイもスーツも汚れている。
石田はそんな自分を見てため息をついた。
「・・・石田、起きたのか?」
隣の運転席で座っていた遠藤が石田に気付いて起き上がる。
「先輩、これからどうします?」
「6時か・・・。とりあえず、8時までには神奈川を越えて埼玉辺りに行こう。」
石田は遠藤の言葉を聞くと、再び大きくため息をついた。
遠藤はそんな石田を見て肩に手をそっと置いた。
「石田。分かるだろこの状況?明らかに、敵は本城だけじゃない。我々が警察に自首しても、結果は奴らの思うがままだ。」
「分かってますよ・・・。けど、僕には彼女がいるんです。せめて、神奈川に行く前に彼女に会わせてください。」
石田は遠藤に頼むが、遠藤は首を横に振った。
「・・・無理なのは分かってるだろ。お前や、私たちの知り合いには警察が張り込んでいるはずだ。」
遠藤はそう言うと、車のエンジンをかける。
「・・・あいつ、大丈夫かな?」
石田がつぶやいたその時だった。
バリン!!
「うおっ!!」
突如、フロントガラスが割れて遠藤と石田にガラスの破片が襲いかかる。
遠藤は急いで車から降り、車の後ろに素早く隠れた。
「な、なんだ!?」
遠藤は車の陰から前を見る。
しかし、車と遠藤の前方には人どころか建物もない。
建物は数キロ先にあるマンションが見えるぐらいだ。
「石田?」
遠藤は後ろから車の中を覗きこむ。
後ろから見ると、石田は未だに助手席に座っている。
「おい、石田。こういうときは素早く・・・かくれ・・・」
遠藤は石田に近づくと、口の動きを止めた。
そして、その場にしゃがみこみ口をポカンと開け唖然とした。
石田は、額の中心を撃ち抜かれてすでに死んでいた。
目はカッと開き、口は半開き、傷口からは次々と血が出てきている。
「い、石田!!!!」
遠藤はドアを開け、石田の肩をつかみ揺さぶる。
「起きろ!!嘘だ!!彼女に会うんだろ!?」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
遠藤は女性の悲鳴に後ろを振り向く。
車の後ろに、犬を連れた中年の女性が悲鳴をあげて突っ立っている。
「くそっ!!」
遠藤は石田の目と口を閉じると、そのまま神奈川方面へと走って行った。
**********
石田が死亡した地点から10キロ先
平地に目立つように立つ7階マンションの屋上に、黒いジャージにサングラスをかけた男がいた。
男は構えていたスナイパーライフルを降ろすとニヤリと笑う。
「殺した?アルファ?」
アルファと呼ばれる男の後ろから、スーツに髪がオールバックの男性が現れる。
男性の左目には大きな傷があり、両手は包帯で隠れている。
「トゥーダッシュ、標的は殺した。もう一人は神奈川に侵入したようだ。」
トゥーダッシュはその言葉を聞くと、ニッコリと笑い頷いた。
「そうか。それならあの方もお喜びになる。次のターゲットに向かうぞ。」
謎の2人はその場を後にし、次の場所へと向かった。
**********
東京県警 10階 特別捜査室‘逃亡犯確保計画’
眼鏡をかけ、髪を後ろで束ねたスーツを着た男が広い会議室に一人だけでいた。
男は白いボードの前に立ち、ボードに張られてある逃亡犯9人の顔を見ていた。
「学園生徒に校長、現役刑事に指名手配犯、そして、元気象庁で本城と関係のある男・・・」
FBI日本支局リーダーの神永龍一郎は一人でブツブツとつぶやきながら推理をしていた。
「・・・逃げる場所はどこだ?自宅、愛人の家、知り合い、・・・・県外。」
龍一郎は9人の顔写真の隣に大きく貼られてある日本地図を見ると、東京の周りをペンで指す。
「逃亡から2日。範囲は・・・」
龍一郎はペンで東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、栃木、群馬に印をつける。
ペンを置くと、携帯で部下に電話をかけ始めた。
『はい?』
『俺だ。東京を囲む県に検問をしろと言え。』
『了解しました。それと、情報が・・・』
『なんだ?』
『今朝、東京と神奈川の県境に架かる諸墓橋にて、逃亡犯の石田悠が射殺されているのが発見されました。』
龍一郎はその言葉を聞くと、目を大きく開いて静かに驚いた。
『現場からは、恐らく遠藤刑事・・・あっ。遠藤容疑者が逃げるのが確認されております。』
『分かった。そこは神奈川県警に任せておけ。』
龍一郎は携帯を切ると、9人の顔写真を見た。
「石田悠。まだ若いのに・・・残念だ。」
龍一郎はペンで石田の顔写真にバツ印をつける。
「残りは8人・・・お前らが行く先は・・・・
闇だ__________