ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】  ( No.102 )
日時: 2010/06/24 19:10
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)

【38】
記憶が終わると、また炎が燃え、元の部屋へと戻っていく。炎はさっきのを巻き戻したかのような順序で、伊咲夜さんの小瓶へ戻っていく。

「“最初の魔法”とは何ですか?」

ボクは小瓶を棚に戻す伊咲夜さんに聞く。

「わかりません。私は魔導の血を引くお屋敷に雇われただけですから。詩句様もそんなこと一言もいっておられませんでしたし」

“最初の魔法”。青い薔薇のことだろうか?

だがよろしくといったのは薔薇でも魔法でもなく、詩句さん自身。

きっと“最初の魔法”を、詩句さん自信が持っているということだろう。

ボクはそう解釈した。

ボクが考えているうちに、伊咲夜さんが小瓶を持ってくる。次は緑色だった。

「次は何ですか?」
「これを見せる前に間の出来事をお知らせします。旦那様はあれからすぐにお亡くなりになり、詩句様はそれと同時に行方不明になったと、本家から、異世界説を信じる極わずかな使用人から便りが届きました。その時はとても心配しましたが、その後記憶が届きましたので、本家には何時帰ってきてもいいようにするよう連絡をしました。」

本家も記憶の館も、さぞかし大変だったろうなぁ。

「詩句様はそれから何回もこちらに記憶をくださってたので、情況はは理解していました。次の記憶は詩句様の一大決心の話です」

さっきと同じ順序で炎が燃え上がる。今度の場所はきれいな町中だった。



詩句が独り、公園のベンチで本を読んでいる。難しいのか眉間にしわがよっていた。

リコリスさんが気づき歩み寄る。

「詩句さん。なにやってるの?」

そういわれ、あわてて本をしまいこむ詩句。

「えっ、あっ!リコリスさん。何でもないよ?本読んでると落ち着くなーって」

棒読み。リコリスさんはじっと詩句の目をみつめるが、はぁーとため息をつく。

「ワタシは人の心とこれからの行動。未来についてしることができるけど、あなただけはなにもわからないな」
「え!あっ、そうなの?ふーん」

詩句は驚くが、その顔は少し笑っていた。

「まぁ、あんまり考えなくても大丈夫だよ?、ワタシ達は今順調に進んでるから」
「あ!うん。わかってるよ」

詩句が承諾すると、リコリスさんは去っていった。

詩句はほっとしたのか、ため息をつき、また本を読みだした。



場所がかわり、宿の一部屋。窓から見える外からするに、どうやら夜中のようだ。

詩句はまだ起きていて、机でなにか書いている。どうやらそれは歌詞のようだ。



また場所がかわる。今度は町外れだった。

「ねぇ、詩句。聞いてもらいたい歌ってどんな歌?私にだけ教えてくれない?」

そういったのは蓬さんだった。

「ダメだよ、蓬さん!聞いてからのお楽しみだよ?」
「今度はいったい何の魔だ?俺のような神聖な存在に魔をかけるなんてどうかしてる」
「そんなこといわないで鶴覡君。詩句ちゃんは狂ってないよ。和装のくせに天使だなんて、そっちの方がよっぽど狂ってるって!あぁ〜天使!それも和装!!鶴覡君!今度解剖させてよ!」
「黙れ歌静!和装天使。いちおうあってるがな、失言してる!失明させるぞ!」
「歌静先生!あまり遠くまで行かないでください!はぐれますから!!」

ケラケラと歌静さんが笑いながら逃げる。鶴覡さんも槍を構え追いかけるが途中でこけ、またケラケラと歌静さんに笑われる。

それをはらはらして見ている歌静さんの弟子の白縫さん。

「ええ歌やったら、俺の友達の情報屋にも、聞かせてやりたいな」
「…トモダチ?…イツム…トモダチ…イタノ?…ジョウホウヤ?」
「なんや七テク?その驚きようは!俺にも友達くらいおるわ!!」

乙霧さんが七テクちゃんと話している。

みんなこれからなにがおこるか知らずに。
気楽に話している。陽気に話してる。

柊さんもリコリスさんも御影さんも蓬さんも鶴覡さんも歌静さんも乙霧さんも七テクちゃんも斑ちゃんも斑君も白縫さんもみんな、みんな。

そう、なにも知らずに、気楽に、陽気に………。