ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】  ( No.104 )
日時: 2010/06/24 19:11
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)


【40】
青い炎は輝きを弱めながら戻っていった。

「これで終わりですか?続きは!?」

きっと今のが柊さん達がいう反乱の序章の部分だろう。

「続きは直に見た私がお話致します。」
「直にって…伊咲夜さんあの場所にいたんですか!?」

それって凄いことじゃないだろうか?

「いましたよ?詩句様は術が成功すれば、私と一緒にこの館に帰るはずでしたから。」

…お迎えにあがりました。って感じか…。

「で?あの後どうなったんですか?」
「あの後は一言でいえば仲間割れでしたよ。自分自分の理由で分かれてました。」
「?さっきのを話では鶴覡さんと双竜の2人。乙霧さんと七テクちゃんのチームと残りって感じでしたけど…」

会ったことはないがいつもと同じ法則で呼んでしまうボクって何なんだろうな。

「いえ、あの後鶴覡さんが柊さんの方へきます。白縫さんは歌静さんに破門されて行ってしまいますが…」

歌静さん…何考えてんだ。

「ひどいものでした。町の全てを巻き込み、死んだ町人は死霊兵として使われて…それでも両者一歩も譲らず、何日も何年も続きましたよ」
「何年!?伊咲夜さんよくいられましたね!」
「主人を待つために待機するのは、使用人として当然です!」

さすが、伊咲夜さん!かっこいい…。

「それで?どうやって終わったんですか?」
「どこか遠い世界へ送って、殺さず、死なせないようにという詩句様の決断で幕がおりましたよ。両者引き分け。お蔵入りという感じですかね?そして空兎は修復不可能な程に割れていましたので、解散ということでした。」

長年続いてたら、そりゃ解散するのも仕方がないだろう。

「で?まだ昨日の質問に答えてもらってませんよ?」
「つい最近。詩句様から手紙が届きました。もしかしたら何十年もの間世界をただよっていたかもしれないので、手紙はつい最近のものではないのでしょうが…。」

伊咲夜さんはポケットから封筒を取り出し、ボクに見せる。

『記憶の館、または本家の使用人へ
 記憶が届いていることを前提で話します。
 ワタシは今、ワタシが願ったとおり、どこかもわからない世界にいます。
 あの出来事を知っている空兎のメンバー以外は生き残った町の住人も抹殺する予定だと御影さんから聞きました。
 あの場所にきてもらっていた伊咲夜をはじめ、記憶を見てしまった使用人達。
 十分注意してください。柊さんに見つからないよう、気をつけて…
                       詩句』
 
「あの記憶が届いた頃には、それまで連絡が全くなかったため、私が聞いた出来事を聞き、鵜呑みにしてしまった使用人達は、やめていまして、私しか残っておりませんでした。だから、私しかあの戦争については知っておりません。」

伊咲夜さんは淡々と述べる。

「これが答えです。」

伊咲夜さんが頭を下げる。

つまりそれは、記憶を守るためであり、主人の命令を守るためであり、自分を守るためであった。

こんな命令は使用人が主人を信じ、主人が使用人を信じないとできないだろう。

「いい主人ですね。“詩句”さんは」

ボクはいった。

「はい、私もそう思います。」

伊咲夜さんはにっこり笑った。

ステンドグラスから入る日はいつのまにか淡く染まっていた。

「じゃあ、ボクは帰ります。いくら柊さんが二日酔いだからといって、日が暮れる間に帰らないと!」
「そうですか。あの…またこの館にきてくださいね?いつか、詩句様も帰ってきたとき、使用人が減っていて驚いても、1人ぐらい新人さんがいれば大丈夫かもしれませんしし!」
「…ボクは使用人にはなりませんよ!?でも、アイスティーを習いにきます!」

そんな間の抜けた話をしていると、いきなり下の魔法陣全てが光りだした。

あまりにも眩しくて目を閉じる………。

「誰ですか!記憶の間に突然入ってくるなんて!無礼者!名を名乗れ!!」

どうやら、伊咲夜さんは目を閉じてないらしい…。ボクも目をあけた。

まだ光っていたが、確かに真ん中の水晶が会った場所に、2人分の影が見えていた。

「その声は伊咲夜?性格も変わってないね!」

その声は、記憶で何回も聞いた声だった。

「詩句!この水晶もらっちゃダメ?僕、昨日から君のこと手伝ってるよ?」

その声は、昨日路地裏で何回も聞いた声だった。

スッと光が消え、2人の正体が現れる。

伊咲夜さんをみると、急いで身だしなみをチェックしていた。そしてスカートの裾をつかみ見事な一礼。

「詩句さま!お帰りなさいませ!!」

そう、そこにいたのは“詩句”さん張本人と、昨日出会ったセシルさんだった。