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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.108 )
- 日時: 2010/07/08 15:39
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【41】:プロローグ
「ここ」
元の世界への道を見つけた時、私は隣にいる男にそういった。
男は私が帰れるようにしてくれた子の宿主。
男は、旅人ノ街から遠ざかるのに比例するように顔をゆがませ、今は額に汗までかいていた。
…別にそんなに荷物は重くないのだけれど。
「本当にここですねぇ?いやいやいやいや。柊の呪いはもうとっくの昔に解けてると思ってましたけど、どうやらまだのようですねぇ」
男はそういい、袖で額の汗をぬぐう。笑っていた顔が一瞬無表情になる
「ひどいな。詩句は…」
「?」
私は首をかしげた。詩句というのは私を手伝ってくれた子のことだ。
あの子には呪いをかけられるような魔力はなかったはずだ。
ただ…
ただ、あの子にはバンシーの血の魔力が合っただけだ。感情をしまい込んでいたし、呪いをかけた形跡もなかった。
私もいちおう魔女。それくらいわかる。
まぁ…この男はあまりにもまじないや呪いが多く絡まっていてわからないけど…。
「荷物おいておいていい。自分で運ぶ」
男があまりにもつらそうなので言った。
「ありがたいですねぇ。昔の柊なら、あなたの気遣いなどいらなかったのですがねぇ…では、またのお越しをお待ちしておりますよぉ?」
男は手も振らず、荷物をそこにおいて帰って行った。
詩句という名前が気にかかったが、あえて聞かなかった。
もう、2度と会うことなどないはずだから、私が心配しても、どうしようもないから…。
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