ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】  ( No.109 )
日時: 2010/07/08 16:19
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)

【42】
世界は過去へと戻っていた。

小さな村の噴水では、たくさんの魔女や魔法使い、悪魔や精霊が踊り、噴水の水もそれに合わせて形を変える。

「あら?ひーちゃん?どこ言ってたの?」
「一二三お帰り!出張?街に行ってたとか?」
「街に!?魔女だってばれなかった?」

そんな言葉が私に飛びかかってくる。

私は皆がいっているように、街に行っていたことにした。

噴水のところには、まだ私がいつも座っていたロッキングチェアがあった。

「おかえり〜」と、手を振るようにギコギコ音をたてながら揺れていた。

帰ってきた。そういう気持ちがこみ上げてきて嬉しくなった。



村の端っこにある私の家も何1つ変わっていなかった。

まぁ、変わったといえば、扉のとこに人形に関する依頼の申し込みがたくさん張ってあった。

私は紅茶をいれ、飲みながら依頼1つ1つに目を通していく。

「なぁなぁ、私にもおくれよ。」

いきなり話声が聞こえ、思わずカップを放してしまった。とっさに床に落ちる前に浮上の魔法をかけた。

もうできないと思っていた魔法は成功していた。

「何笑ってんのさ。いいから私にもおくれってば!」

私は何なのかわからなくて周りを見渡す。

「あぁ、もう!ここだよ。テーブルの上。あんたの目の前さ!ずっと一緒の相棒を、忘れたとは言わせないよ」

テーブルの上を見ると、金髪で灰色のくりくりとした目をした人形がおいてあった。

ややこちらを睨み、はぁ〜とため息をついている。

「ヤドリ?話せるようになったの?」
「疑問系?私は過去でも今でも未来でもヤドリさ。一時期話せなくなったけど、今はこうやって話せてるだろ?」

ヤドリは1番最初に作った魔法人形で、相棒でもある。私が魔法を使えなくなってしまったため、ヤドリも話せなくなっていたのだった。

「ヤドリお帰り。私がここに戻れたのはヤドリの記憶のおかげ。ありがとう」

私が言うと、ヤドリは顔を赤らめ、そっぽを向く。

「な、何いきなりっ!お帰りじゃないしさ…一二三はずっと側に置いていてくれたしさ、話せなくなったから捨てられると思ったけど…怖かったけど…特別だっていってくれたから…その…嬉しかった!」

ヤドリは少々強気で、そのかわいらしい姿とはギャップがあり、周りからは失敗作だとも言われたことがある…。

だけど、私にとっては、私のことを一番思ってくれている大事な家族だった。

私はにっこり笑いかけ、紅茶をいれにいった。



戻ると、ヤドリは熱心にその小さい手で依頼書をつかみ、読んでいた。

「一二三!全部期日過ぎちゃってるよ?」
「大丈夫。お得意様ばかりだから、待ってくれる…。」

多分…今更なのでわからないけど…。

「あちち…紅茶冷ましてよね。人形は暑いのは口に入れられないよ!」

ヤドリは紅茶をふーふー冷ます。

「ロッキングチェアが待ってる…行こうか?」

私はふと思い出しいう。

「え?今飲んでるんだけど…。」
「帰ってくれば冷める」

私はそういって、準備始める。いちおう依頼をその場でこなせるように持って行く。

ヤドリは何もいわなくても籠に飛び乗った。

「ほら行くよ?一二三前進!」

ヤドリがそういったので、思わず笑った。

「あははははははは」

ヤドリも一緒に笑い出す

「「あははははははは」」