ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.118 )
- 日時: 2010/07/19 20:03
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【45】
「決まったようですね。ではヤドリさんはいただきます。」
そういわれ、ヤドリはコクっとうなずき、白縫さんに歩み寄った。
すると、いきなり白縫さんは本の白紙のページをちぎり、ヤドリに持たせた。
“ボフンッ”と音がして、煙があがる。
煙が晴れたときには、ヤドリはいなかった。
ただ紙には金髪で灰色の眼をした人形の姿が描かれていた。
白縫さんはひょいっとそれを拾い、本にはさみ直した。片眼鏡をはずす。
私は泣かなかった。もう、誰にも慰めてほしくなかったから。
誰かに慰めてもらったら、ヤドリがいつも慰めてくれていた声まで消えてしまいそうだったから。
「では、先生に再会したら即この世界の時を止めましょう。取引は成立しました。アタシは優秀です。しっかり約束は守りましょう。」
そういって、白縫さんはいなくなろうとする。
「待って。取引変更」
私は涙を拭いながらいった。
「世界はこのままでいい。代わりに一緒に連れていってほしい」
「?いいんですか?」
白縫さんは怪訝な顔をしながら聞く。
私はコクっとうなずいた。
故郷の世界に必要とされないなら、別の世界へ行けばいいと、簡単に思えた。
故郷を捨てるわけじゃないけど、世界でもっと私を必要としてるかもしれない。それなら、とどまらずに進むべきだと思う。
その方がいろいろな経験がつめるし、なんせついていくのは歌静さんだ。これほどいい出だしはないだろう。
そして、これがヤドリが望むことであり、私の進む道だと思う。
まぁ、本当かはわからない。ヤドリはもういないから。
でも魔導の道には直感が大事だというし…。
「わかりました。では、一緒に行きましょうか?まずは先生を捜さなければ。きっと詩句を置いてきた世界あたりにると思うのですが…」
軽く了承してくれた。私はロッキングチェアを小さなトランクへと変え、中に道具を詰め込んだ。
「詩句?男の子?」
私は気になるので聞いた。白縫さんはきょとんとする。
「詩句は女ですよ?まったく、あの子には大変な迷惑をかけられましたよ。優秀な私でも大変でした。よく柊さんは笑っていられましたと、今でも関心ですよ」
柊は荷物を持ってくれたあの男のことだ。どうやら詩句違いだったらしい。
詩句という名はもしかしたら他の世界では珍しい名前ではないのかもしれない。
少しホッとした。
「では、参りましょうか」
私はコクっとうなずいた。
いつか一流の人形師になって、役に立てるようになろう
未来の故郷でも必要とされるぐらいに!
新たな目標をかかげ、私は白縫さんの後を追った。