ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.137 )
- 日時: 2010/08/15 15:50
- 名前: 譲羽 (ID: OcUNQWvQ)
【54】
『四方八方位、どこ行っても36歩目にはここに辿り着いたよ?』
ボクは画面に寄りかかりながらいった。
感覚、声、動きの束縛がなくなり、次に七テクちゃんがやった事は、ボクをいろんな方向に歩数を数えさせながら歩かせたことだ。
自分より年下の子にこき使われるという趣味や属性はボクにはないのでやや苦笑いだった。
まぁ、やってることがここから抜け出す方法に繋がるのだろうから文句はいってられないのだが…。
『“詩句”独特…束縛。流石』
…“詩句”さん誉められている。
『デモ簡単。…“詩句”歌魔法…使ウ。昔…癖変ワラナイ』
…なんだか七テクちゃんは楽しそうだ。鼻歌を歌っている。
『簡単なら素早く終わらせようよ』
『ソウスル』
ボクに同意し、目を閉じ、両手で頭を抱える。
さっきのように瞼の中で目玉が動いている。
『全関門異常無…素通可?成功率100%…終了迄残3秒…2…』
?さっきといっていることが違う。異常がないということは罠もパスワードみたいなセキリュティーみたいなものもないということだろうか?
それはあまりにも簡単すぎる…。
ボクはふとある疑問が浮かんできた。
『ちょっと待った!ストップストップ!!』
ボクはそういいながら七テクちゃんの肩を掴み揺する。
『束縛解除失敗…外部カラ攻撃受。束縛解除強制終了』
そういい放つと、七テクちゃんは目をこすり、寝起きのようにムズがりながら目を開く。
『何スル?詩句!…束縛解除…凄ク集中スル。削ガレル…失敗!』
凄く怒られた。
やや申し訳ない気持ちになる。
『ゴメン、七テクちゃん。聞き忘れたんだけど、束縛解いたらここから出れるってことだよね?いったい、どこに繋がるのかな?』
館に真っ直ぐ戻ってしまえばいいのだが、ボクの躰に綺麗に戻るか心配だ。
もし戻らなかったらそれこそ地縛霊になってしまう。
七テクちゃんの顔は一瞬青冷め、ホッとした。
『分カンナカッタ…危ナイ。ソノママヤル…死ンデモ“意志”…下…辿りツケナカッタ』
どうやら本当に危なかったようで。ボクも止めてよかったとホッとする。
だが、それもつかの間、新しい疑問が浮かんでいた。
『“意志”?誰の意志?』
“意志”という単語は“詩句”さんの記憶でも聞いた気がする。バンシーの七テクちゃんを始め、ボクの知っている双竜兄妹。和風天使さんもいっていた。
『人間…宗教一緒。人間イウ神様。全世界創ッタ…精霊…妖精…人間イウ空想生物…統ベル者。崇拝スル意志。生ミ親。生ケル神』
『生き神?生きてるの?てかまず存在してるの?』
神というものは人間がすがるために作り上げたそれこそ空想生物だ。実際にその辺を歩いているわけもないはずだ。
まぁ、それはあくまでボクの考えで、他世界では普通に歩いていたりして。
『見タ事ナイ。…感ジルダケ』
七テクちゃんにいわせれば、どこにいるか、それがどんな姿をしているのかも分からないのにただ存在を感じるらしい。
何も言ってこないし、こちらも伝えることはできないが、人間がいう空想生物全てが意識をはっきり持った時、その意志が自分を創ってくれたと感じるのだという。
全ての生みの親。全てをその意志だけで統べ、崇拝させる生き神。
『なんだか信じられない話だね』
『人間…必要ナイ。ダカラ信ジラレナイ』
七テクちゃんが最もなことをいっている。
信じる者は救われるというが、信じる必要がないものや信じられないもの、信じたくないものを信じても救われることはないのだから。
『ボクの興味本位のせいでなんだか話が深刻化しちゃったね。どうやってここから出るか考え直した?』
ボクが聞くと七テクちゃんはコクッと自信ありげに頷いた。
『リコリス鏡…カラ脱出スル』