ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.144 )
- 日時: 2011/01/25 23:10
- 名前: 譲羽 (ID: vehLH22f)
【56】
「リコリスさん…何で?」
「何ではこっちの台詞ですよ?」
目で笑いながらいつもと変わらぬ調子でいう
どうせ知ってるくせに。
この人が知らない事が世の中にはたくさんあるかもしれないが、とにかく僕のこの状況について知らないことは一つもないはずだ
「そうですね。ここはボクの孤立した世界。ボクの家ですよ」
そういわれふと周りを見ると、壁中いたるところに鏡が飾られたくさんの“モノ”が入っていた。
床では見知らぬ女性がすやすや眠っており、その隣には懐かしい顔をした男性が気を失っていた。
「何故ここに胎無さんが?」
旅人ノ町の図書館の館長で、ボクを恋人のために殺そうとしたその人がそこにいた
思わずぎょっとして後退する
「ボクの鏡に閉じこめたのは覚えていますか?七テクちゃんと一緒にいれたのが間違いでしたよ」
いや、あれは吸血鬼とその恋人としていれる必要があったからどうしようもなかったのですけれどもね
と珍しく溜息をつくリコリスさん
説明が続く
「ボクの鏡は外から割ると中に入っているもの共々壊れます。だけど内側に突然何かが侵入してくるとって普通そんな事はありえないのですけどね。すると、鏡の檻が耐えられなくなって中に入っているモノが出てきてしまうんです」
つまり、七テクちゃんと胎無さんが監禁されていた鏡の中に突然ボクが七テクちゃんと共に移動してきたため、鏡からの脱出ができたということ
七テクちゃんはそれを知らなかったはずだ
ということは一生今度は鏡の中に閉じこめられていたかもしれない
少し七テクちゃんに着いていく時は考えないとな
そういえば七テクちゃんは何処へ消えたのだろうか
そんな事を考えていたら突然今まですやすや寝ていた女性が立ち上がった。この人はリコリスさんの愛人とかかなぁ?
てかリコリスさんの性別はどっちなのだろうか
女性はきょろきょろ辺りを見回しいきなり飛び跳ね始めた
「え…ちょ、ちょっと!もしかして鏡の中からも出られてる??え、うわーい!!」
ボクは呆然としてそれを見ているとその人はボクに近寄ってポンと肩に手を置く
「ちょっと感謝してくださいね。私のお陰なんだから!えへへまさかここまで行くとは思わなかったよー!あ!向日葵!!大丈夫?ちょっと!!起きてくださーい」
…状況が理解できない。
「彼女はナテクナシクロケット。昔は最年少束縛師としてある世界で名を馳せたが、若いうちに死んでバンシーとなりました。歌静に血を抜かれて吸血鬼になりましたけどね」
リコリスさんの素晴らしい解説。
てか目の前の人が七テクちゃん?
身長はさっきの1、5倍くらい。確かにさっき着ていたのに似てる浴衣を着ているし、ツインテールだってしてる。目も赤いし髪も灰色だ。
それでもさっきは本当にボクより幼くて子供だった。なのに今は蓬さんよりちょっと若いくらいの大人になっている
話し方も読みやすい話し方になってるし
「七テクさんの好きな人って胎無さんだったんですか?」
なんか聞いた話だと思ったら胎無さんが話していた気がする
吸血鬼の恋人…代わりの人殺し…空兎に彼女がやられて
全部ぴったりじゃないか!
「うん。そだよ!この人はとってもいい人なの。吸血鬼の私を住ませてくれたし、私の代わりに人殺しもしてくれて!」
私はなにもしてあげられなかったけどね
そういういいながらも笑う七テクちゃんじゃなくて七テクさん。いや、やっぱりちゃん
彼女は幾らその背丈が大きくなっても、幾ら幽霊になってずっと生きていても結局は若くしてなくなった悲しい魂なのだから
だから泣いているくせに無理に笑って明るく振る舞う彼女に、ボクは泣きたいのなら好きなだけ素直に泣けばいいだなんて
八つ当たりはできなかった