ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.145 )
- 日時: 2011/01/25 23:12
- 名前: 譲羽 (ID: vehLH22f)
【57】
「えーとゴメン七テクちゃん。悪いけどまだ胎無さん起こさないでくれる?」
寧ろ寝かせといて
この前あんな事があったのにいくら彼女がいるからって警戒心をそんな簡単に解けるボクじゃない
「え?あーうんいいけど」
なんだか後ろめたそうにしながらも従ってくれた
そう、ちょっとまだ問題がある。のろけとかそういうのは少しボクの問題が片づいてからにしよう
「問題っていいますけど何かあるんですか?詩句さん。あ、いや澪さんって呼んだ方がいいですか?」
リコリスさんが鏡を拭きながらボクに尋ねる
問題ならたくさんあるじゃないか。
“詩句”さんとか…まずボクは街へと戻らねばなるまい
「それは別に今の貴方にとっての問題ではありませんよ?柊さんと“詩句”さんの問題です。それに貴方は今街に戻る必要も別にありません。こだわる必要がないんです。故郷をこれから探す選択肢もあります」
そう、別にボクはあの時セシルさんに言われたのと同じように故郷を探しに行く選択肢がある
なぜボクはあの街にこだわるのだろうか?
何故戻らねばならないと思うのだろうか?
答えはもう見つかっていた
「ボクは“詩句”さんと話をつけにいかないといけないんです」
「何で?いいでしょもう。怖いとこに行かないでよせっかく逃げてきたんだよ?」
七テクちゃんが首をかしげる
「柊さんはボクの恩人なんです。何か裏があったとしてもボクを助けてくれて、ボクのために今幽閉されてるんですよ?ならボクはあの人を助けに行かないといけません」
そう、例え裏があったとしても。
いや、裏なんてあるわけがない。ボクは心の奥底から柊さんを信頼しているみたいだ。なにも根拠はないのにどこか信じている
「セシルさんに言われませんでしたか?ボクからあらためて問いを出しましょう貴方には選択肢があります。今すぐ故郷を探すか、“詩句”さんと話に行くか。」
「分かってるでしょう?」
ボクはリコリスさんに向かって笑った
リコリスさんも目を輝かせ笑うそして七テクちゃんのほうを向いて言った
「七テクは旅人だから街までいけるよね?」
「え、うんいけるよ?いきたいと思わないけど??」
いきなり話しかけられて少々たじろいでいる
「どーせ行くあてもないんでしょ?向日葵は大きな図書館の館長をやってるんだよ?一緒に戻ったら?」
「え、でもでも。巻き込まれるのゴメンだし…」
「それに鏡からでれたのは詩句のお陰だよね?一つ手伝うべきじゃないかな?」
「え、あーうぅそうだね。そうだよねうんしょうがないかな…」
はっきりいって言葉責めだろこれ
七テクちゃんが少しかわいそうだ
「無理しないで。いろいろ手伝ってもらったし十分だよ?」
「ううん。リコリスと二人でいるのやなの苦手…向日葵起きても現状説明できなそうだし。街で目覚めさせてあげれば私が行き着いたって事ですみそうだし」
あぁ見事にリコリスさんに押されて、自分の考えを曲げて行いを正当化してるよ…
こんな性格では空兎では大変苦労しただろうな。双竜の葬儀屋の方とか蓬さんとか
押し強いし。返せればそんなでもないけどさ
「詩句じゃあ行こうね。リコリスさん向日葵だけど…」
「今回の件が終わったら図書館においておくから。怪我はおわせないように気をつけるから」
「あ、うんその…ありがとうございます」
そういうと七テクちゃんはボクの手を握った
「絶対離さないでね?慣れがない詩句は世界と世界の境に取り残されちゃうから」
「はい」
リコリスさんはご丁寧に出入り口の扉をあけてくれた。
“先は幸福かもしれないはたまた不幸かもしれない。開けてみなけりゃ分からない。開けてみないと楽しめない”
ボクでも七テクちゃんでも胎無さんでもない誰の声模写かその声でリコリスさんは機嫌良く口ずさんでいた。