ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】—オリキャラ先着1名募集中!! ( No.17 )
- 日時: 2010/07/14 17:59
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【4】
ギィイィ——
ボクらが黙っていると静かにカウンター裏の扉が開いた。
「キャッホー!! たっだいまぁ、柊!!」
金銀財宝を体中につけた女が入ってきた。いきなり柊さんに抱きつく……。
リコリスさんは見向きもしない。柊さんの笑いの絶えない顔は少々ひきつっていた。
「こ、これはこれは。蓬嬢(ヨモギジョウ)ではありませんかぁ……」
「うん。今回も大儲け! ずっと逢えなくてさびしかったん だから!!」
蓬(ヨモギ)さんはぎゅっとさっきより力を込めて抱きしめる。
「いいから放してくれませんかねぇ……」
柊さんが困ったようにいいながら引き剥がそうとする。
蓬嬢……蓬さん?この人も柊さんの友達だろうか……。
柊さん。顔ひろいなぁ……。
「そうですよ? 柊さんの昔の友達です。蓬さんは女盗賊なんですよ! 今回は1週間くらい違う世界に行ってました。」
リコリスさん……解説は嬉しいけど心は読まないでほしい……。
「すいません」
だから謝られても……。そんなおかしなトークをやってたら蓬さんが近づいてきた。
「なにこの坊や? まさか隠し子!? 柊……リコリスと……」
蓬さんがボクに一別投げかけ、それから手を口にあてながら柊さんを見る。
どうやら顔やリアクションに気持ちがでやすい人のようだ。
「違いますよぉ? 拾ったんです。だいたい性別もイマイチわからない多重人格となんてありえませんねぇ」
柊さんは肩をすくめていう。
「ひどいですねぇ。柊氏(ヒイラギシ)は」
リコリスさんの微妙にしか見えない顔に滴がつたう……でも震えてるし……笑い泣き?
「詩句さんは鋭いですね」
「え! 今何ていったの!?」
ボクがツッコむよりまえに蓬さんが驚く。
「詩句っていったの! まったく。蓬は耳が遠いんだか ら!」
「詩句……この子そんな名前なの?」
「そうですよぉ? 柊がつけたんですからねえ」
だから? という思いを込めたように柊さんがいう。
「はぁ!? なんで"恋人”の私に相談しないのよ!!」
カウンターにバンッと手をあて、柊さんに怒鳴る
青ざめていた蓬さんの顔が赤くなる……てか恋人!?
「詩句、そんな驚いた顔しないでくださいよ。恋人ってのは勘違いですからね、蓬嬢が勝手に——」
「恋人です! 私はあんたに惚れたからまだ縁を切ってないのよ! だいたいなんで坊やだけ呼び捨てなわけ! 私は!?」
蓬さんが柊さんに牙を向く。柊さんもわらいながらも困ってるようだ。
にぎやかだな。縁を切ってないってどういう意味なんだろう?
「いろいろあるんです」
……ありがとうリコリスさん。
あ! この話は終わりにしてください! 何もいいませんから、謝らなくてもいいですからね!
ボクは心の中でリコリスさんに釘をさした。
「そうだわ! 蓬。あんた詩句と一緒に街を歩いてきなさいよ」
リコリスさんはボクをちらっと不満な眼差しで見た後、柊さんに助け船をだした。
「なんで? 私は坊やとデートする趣味はないけど」
「あんた説明上手でしょ? 顔もきくし、街を案内してあげたら?」
「……そうですねぇ。蓬嬢がやってくれたら柊は助かるのですが」
柊さんもリコリスさんに合わせる。
蓬さんは目を輝かせた。
「!! やる! 私やるわ! 行きましょ詩句!」
わかりやすい……いや、乗せやすい人だ。柊さんに惚れてるのはどうやら本当らしい。
ボクは蓬さんに腕を掴まれ、さっきの扉と逆の、客用の出入り口をくぐる。
ちらっと2人の顔を見ると、ホッとした顔をしていた。