ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.42 )
- 日時: 2010/07/14 18:24
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【13】
「ここどこですか…?」
ボクはリコリスさんと御影さんと一緒に街の端の方に来ている。
船から降りたボク達の目の前にはなんだか陰気くさい—っていうか危なそうな裏商店通りが広がっていた。
「街裏の象徴。“散り逝き通り”(チリユキドオリ)です。御影が情報屋に行きたいんだってよ」
「で?どこか知ってんだろうな?初めて来たとかシャレになんないぜ!」
「大丈夫だ。最近何回も来てるからな」
リコリスさんこんなとこの情報屋に来てたんだ…。
その情報屋は店と店の間に無理に詰め込んだように建てられていた。少々取れかかっているが、デザインが格好いい看板がついている。
「雅焔(ガエン)いる?」
リコリスさんがドアをノックする。
ドアがきしんで開いた。中からボクより背の小さい女が出てきた。
「リコリス!?また来るっていってたけど早くない?まださっきもらったチョコレート食べ終わってないよ!」
「雅焔。僕はさっき言ったよ?今度は友達を連れてくるって」
ちらっとボクと御影さんを見る。
「あぁ!詩句さんと…柊さんじゃないよね…。まぁいいや、立ち話も何だしどうぞ!!」
中に入るとすぐテーブルがあった。奥には机とイスが置いてある。机には大量のお菓子とたくさんの紙が束ねて置いてあった。
ボク達はテーブルに座らせられた。
「自己紹介といこうかな?僕は嘉神雅焔(カガミガエン)。情報屋だよ、宜しく。」
「ボクは…—」
「詩句さんでしょ!?笑うと存在消しちゃって、泣くと願いを叶えてくれる!記憶喪失で、つい2ヶ月前にこの世界に来たんだよね?今は柊さんとこに在住。」
…詳しすぎる。さすが情報屋ってとこ。
「へぇぇ!!スゲェなお前。俺の知らない情報も持ってるなんて!!」
「ん?君は知らないよ?新しくこの世界に来たの?」
「そうだ。俺は御影紅!異世界の情報屋で月巻組のリーダー。んでもって柊のダチだ」
「紅さん?月巻組?異世界の情報じゃん!!教えて教えて!!」
情報屋同士盛り上がってる…。
「あ、あの…雅焔さん?ボクの情報はどこで?それもしかして流したりしてませんよね?」
「リコリスに教えてもらったよ?少し流したかな…。」
リコリスさんが!?変な個人情報流さないで欲しいのに…。
「だって、雅焔さんが魂くれるって言ったんです。」
「えぇ!?魂を!!大丈夫何ですか!」
ボクは心底驚いた。柊さんならともかく、雅焔さんはあんな耐性ないだろう。
「リコリス。言葉が足りないよ?僕のはダメっていったでしょ?“別に”あげるっていったよ」
「ごめん。」
“別に”?どういう意味だろう…。
「詩句さん気にしなくていいですよ。ボクにはその時が分かってますからあえて承諾したんです。まぁ、雅焔さんのは柊さんの次くらいに欲しいんですけどね。各世界の情報屋の魂を揃えたいものです。」
リコリスさんは真面目に言う。
「リコリス、幾ら魂が好きで集めてるからって僕のは駄目だよ」
雅焔さんは笑って否定した。どうやら結構リコリスさんの対応になれてるみたいだ。
「残念だな…。詩句さん図書館に独りで行って来てください。」
「えぇ!!何でですか!!」
「ボクと御影さんはここで待ってますから。図書館は散り逝き通りの奥にあります」
理由を言われず場所だけ言われた。
「御影さんも同意ですか」
「リコリスの策はいつも的確だ。そろそろ詩句も独り立ちしたらどうだ?いつまで手ぇ繋いで案内してもらうつもりだ?」
「ボクはもうとっくに独り立ちしてます!!!!御影さんにそっくりそのままお返しします!!月巻組とかいう情報網がいつまでもあると思ったら大間違いですからね!!」
ボクはそう言い残すと、リコリスさんから寄付する本を受け取り、ドアを思いっきり閉めた。
久しぶりに怒った気がした。