ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.49 )
- 日時: 2010/07/14 18:40
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【18】
「お疲れさま! リコリスお代もらえた?」
ボク達は雅焔さんの情報屋にお邪魔していた。
結構狭いのに、5人も同じテーブルに座っているから、よけい狭く感じる。
「うん! これでプラマイゼロ。」
「すいませんが雅焔嬢(ガエンジョウ)。詩句に説明してあげてくださいよ。」
「あなたが柊さんですね。はじめまして! お菓子をくれ」
そういわれ、柊さんはクッキーを渡す
「まいどあり! さて詩句さん。どこまで知ってるか教えてもらっていい?」
ボクは胎無さんの彼女の話をした。
「あぁ。その後は柊が牙を灰にしてリコリスが魂をもらったんですよ。あわててあの胎無氏が出てきましたけど、すぐ次の世界に移動したんでしたぁ」
……柊さんが結局説明してる。
「んでもって今回この街で再会した……いやさせたってわけ。もう僕は謝らないよ?」
「させたってなんですか? させたって…。」
「僕はどうしてもリコリスから柊さんや詩句さんの情報を聞きたかった。でも自分の魂はあげられない」
雅焔さんは板チョコをかじりながらいう。
「だから雅焔さんはボクがあげた情報の代わりに胎無さんの魂をボクにくれたんです。」
つまり、ボクの情報のお代として、胎無さんの魂をリコリスさんに渡したってこと? ということは……!!
「胎無さんとボクのさっきの出来事は雅焔さんが後ろで糸をひいてたってことですか!?」
「気づかなかったの? そうだよあの館長に君の情報をながせば今回のような状況ができると考えたからね!」
そこまで考えてやったなんてさすが情報屋だ。
「おかげで僕の魂コレクションの穴が埋まりました。みろよこれ!」
リコリスさんが1枚の鏡を取り出す……—
中には胎無さんと1人の女が映っていた。
幸せそうではなかった。悲しそうでもなかった。ただ映っていた。
「またいらっしゃーい!」
後ろから雅焔さんの声が聞こえる。
「まっ! ハッピーエンドってわけか。リコリスの手の中だけどな。詩句には悪いことをした。蓬が知ったら柊。怒られるぞ?」
「いえいえ。絶対知られませんよ。もう次の仕事にいきましたからねぇ。リコリス氏にはいつもお世話になってますからねぇしょうがないことでしたよ」
御影さんが苦々しく言うのに対し、柊さんはいつものようにマイペースに答える。
「あ、あのリコリスさん…。」
その後ろ、並んで歩いているリコリスさんにボクは尋ねた。
1つだけ引っかかることがあった。
「何ですか?」
「空兎って何ですか? あの…胎無さんが言っていた。」
「ボク達の……柊のチーム名ですよ。昔のね……反乱が起こってなくなりましたけどね」
「そうですか……。」
今日はご機嫌なようだ。すんなり答えてくれた。疑問が解けてボクは少しすっきりした。
空兎。10年前幸せを奪い。10年後の今幸せにした。
ただ幸せだと考えたのはボクだ。胎無さん達が幸せかどうかは2人にしかわからないから。
ただしそう思えば、気にすることも罪悪感もわかない。ならばこれでよかったんだと思う。
2人は再会し、空兎のメンバーは成功を喜んでるから。
ただしこれは言い訳。やっぱりボクの頭の中はもやもやしていた。