ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.6 )
- 日時: 2010/07/14 18:01
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【2】
もう1度目をあけた時には、もう雨の降る音はしなかった。
どうやらボクはベットに寝かされているようだ……。
静かに起きあがる。頭がまだ痛い……。
周りにはテーブルとイス。机しかない。簡素な部屋だ。
「起きた? 嘘でしょう。だって今さっき行ったら爆睡してましたよぉ?」
「嘘じゃないですよぉ? 確かめに行った方がいいと思いますがねぇ?」
下から声がする……1人は聞いた覚えのある声だ……。
カツカツカツカツ——
階段をのぼる足音がする。だからってボクが何かしたわけではないけど……。
「おぉ! おっはようございます!! リコリス氏(リコリスシ)の言ったとおりですねぇ」
案の定。見覚えのある男だ。
「…………」
ボクが黙っていると、男は勝手に話し始めた。
「自己紹介がまだでしたねぇ。柊、ひいらぎ。少年は?」
「…………」
自分の名前がわからないので答えられない……。
「無視ですかぁ、悲しいですねぇ。それともしゃべれないんでしょうかぁ?」
いや、2日前はしゃべってたなぁ。と柊さんは思い直す。
「……しゃべれます。シカトしてすいません。名前が思い出せなくて……」
「あ! 記憶喪失でしたねぇ! なんだぁ、そういうことはリコリス氏がいってましたから知ってるんですよぉ?」
ボクが慌てていうと、柊さんは手をポンッとついた。
てか、わかってるなら聞かないでほしい……。
「すいません……。ここはどこですか?」
ボクは変なことを聞くように、恐る恐る聞く。
「あぁ! 記憶喪失って名前だけわからないんじゃないのでしたねぇ! まぁ、ゆっくり話しましょうよ」
変な人。ふざけてんのかな。
柊さんはボクにかまわずベットに腰掛けた。
「まぁ、面倒ですから簡単にいいますよぉ? ここはあらゆるハグレモノがそろう"旅人ノ街”。通称集い街。階段と水路が多いのが特徴ですかねぇ。して今居るのが柊の経営する喫茶店の2階」
柊さんは1回区切る。ボクはうなずく。
「少年は柊が階段をのぼって喫茶店へ帰る途中、階段の上から飛び降りてきたんですよぉ? よかったですねぇ。柊がいなかったら今頃死んでましたよぉ?」
「……ありがとうございました。」
「いやいやぁ。んで、これから行く下の階にいるのが鏡屋(かがみや)のリコリスなんですが……」
変なとこで区切るな。ボクは首をかしげる。
「心と未来を読む魂好きの多重人格の柊の昔の友達っていったらわかりますかねぇ。」
「わかりません」
即答した。
「ですよねぇ。会ったらわかりますよ。最初は慣れないと思いますが……では行きますか。」
ボクがベットからでれるように柊さんは立ち上がった。
「あの……」
聞き忘れたことがある。
柊さんが知っているかわからないけれど。
「なんですかぁ?」
柊さんはドアノブを握り、回そうとした手を止め、首を傾げて聞いた。
「ボクの名前は?」
「柊は知りませんねぇ。」
柊さんは肩をすくめた。