ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】  ( No.68 )
日時: 2010/05/04 13:49
名前: 譲羽 (ID: M2SneLVI)

【22】
次の日。ボクは朝早くホトソンさんの宿へ行った。

ホトソンさんは宿の床を磨いていた。

「おはようございます!」
「おぉ!坊主じゃねえか!早いな。飯はちゃんと食ったのか?」
「いえ。ホトソンさんと食べようと思って宿主さんにお弁当を作ってもらいました!」
「そうか。俺もちょうど終わったところだ。どれ、紅茶でもいれっか。」
「ボクにいれさせてください!ボク紅茶いれるの得意なんですよ?」

ボクの作戦通りに事がすすむ。ボクはホトソンさんがイスに座るのを見届けてからキッチンに向かい、ドアを閉めた。

お湯をわかし、ティーカップとポットを暖める。その後紅茶葉をいれ紅茶をカップにつぐ。ここまではいつもと一緒だ。

ボクはポケットから小瓶を取り出した。昨日流したボクの涙だ。なんだかボクの涙入りの紅茶を出すのは気が引けるがしょうがない。

ボクはその貴重でもなんでもない1滴をホトソンさん用のカップに垂らした。



「お待たせしました。どうぞ。」

ボクは紅茶を手渡す。

「ありがとな。いい香りだ。」

ズズッとホトソンさんが飲む。

「…ホ、ホトソンさんは花屋の人とどういう関係になりたいんでしたっけ?」
「ん?あぁ…あの人のこと何にも知らないがな、俺はあの人が好きだ。できれば30前に“結婚したい”と思ってるんだがなぁ。」
「…そ、そうですか。」

大丈夫だろうか?“フローラさんと結婚したい”って願ったことになると思うのだが。まだ話しもしたことないみたいだし…恋人でもないのに…。

昨日29歳っていってたから後1年ないのに。

まぁ。時が戻るくらい速攻性と奇想天外性があるしなぁ。

ボクは自分の力なのに半信半疑だった。

ちょっとポジティブに考え、ボクはホトソンさんにフローラさんのことを話した。愛せないことと盗賊なのは省いて。

「そうか…。俺みたいなのとあいそうにないな…。」
「そ、そんなことないです!!てかお似合いすぎて困ります!!悩んでないで今日中に告白するべきです!!」

今回のボクは強引だった。願いが叶うなら早いほうがいいと思ったから。

「な!?今日中に?それはいくら俺でも…」
「今日じゃないとダメです!ボクの宿主さんの友達の多重人格の占い師さんがいってました!!その人すごくあたるんです!!」

嘘八百を並び立てる…。もう1押しかな?

「それに…その人のことを本当に愛してるなら迷わず気持ちをすぐ伝えてどんな結果もうけとめる!それこそが男の浪漫ってものじゃないんですか!?」

自分で言ってなんだかけっこう恥ずかしいきれい事言ってる…。

「そうだよな。俺らしくないな迷うなんて…。迷ったのは昔、戦場で敵の女が倒れてたとき以来だな。」

どうやら上手くいったみたいだ。ホトソンさんは過去を話し出す。

「その女はかろうじて生きてた。背中は酷い火傷を負ってたんだがな。死にそうになってるヤツは見過ごしておけなかった。だが敵だったからな。」
「結局どうしたんですか?」
「助けたさ。その女、盗賊で密偵の役をやってたらしい。流れ弾が当たったんだと。まぁ背中の火傷の後は治らなくてな。そいつからのお礼はこれよ」

そういってホトソンさんは背を向け、顔を下に向ける。

そこにあったのは長く細い傷だった。

「そんなに深くはなかったさ。薔薇の棘で切られたもんだからな。まぁ毒が塗ってあったんで3日3晩くらい苦しんだけどよ」

笑っていうホトソンさんだったが戦場といえば解毒剤とか薬はたいしてない。生きてるのは奇跡じゃないだろうか?

「まぁ、それが上にばれて俺は首になっちまった…だが俺は別に悔やんでねぇさ。今こうやって宿屋やってられんだからな。バカな話だろ?フローラさんをみてるとその助けた女を思い出すんだ。きっと俺は死にかけてたから助けたんじゃねぇ。一目惚れしたんだ。」「…いい話ですね。すてきな話です。」
「ありがとよ。じゃあちっと行って来るよ。本当にありがとな」

そう言ってホトソンさんは宿を出てった。助けたその人自身がフローラさん…エルザさんその人とは知らずに。