ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】  ( No.70 )
日時: 2010/05/04 13:50
名前: 譲羽 (ID: M2SneLVI)

【23】
ボクが朝食の片付けを終えた頃、ちょうどホトソンさんが帰ってきた。顔が笑ってる。

「成功したんですね!じゃあ2人で喫茶店にでも行ったどうですか?ボクの宿主のところがオススメですが…。」
「いや…それがだな…フローラさんは…いや、何でもねぇ。とにかく結婚することになっちまって…」
「はい…?」

何もせず真っ直ぐ結婚!?普通ありえない…。やっぱりボクの涙がきいたのだろうか?

…だとしたら凄い威力…。本当に危なくなってきた。下手したら冗談でも世界がなくなるとかありえる…全然良い能力じゃない!?

あまり使わないようにしなきゃなぁ。

「あぁ驚きだろ?フローラさんも一目惚れだったみたいで…ってそういう場合じゃねぇ!まだ準備も何もねぇし素人が準備したってしょうがねぇだろ?…かといってこの街に“婚儀屋”はいねぇし…—」

婚儀屋?葬儀屋みたいに式とか会場とか準備する人のことかな?そんな人みたこともないし…でもごちそうは柊さんが何とかしてくれるはず…。

「ごちそうぐらいは準備できると思います!!ちょっと一旦帰りますね!!」

ボクはそういうと宿屋を飛び出した。



「柊さん!!柊さん!!柊さん!!柊さん!!柊さん!!柊さん!!柊さん!!柊さん!!」

喫茶店のドアを連呼しながら勢いよく開ける

中には柊さんだけではなく双子の子供がいた。

「…なんですかぁ詩句?お客さんがきてるんですけど」
「すいません!!あの…こちらの子供達は…?」

ボクが聞くといきなりシルクハットが顔面に直撃した。

「子供って言うな!!おいらはこれでも1356歳なんだぞ!!お前の方が子供じゃねえか!!」
「いきなり斑がすいません…。私。斑といいます…。婚儀屋です。そっちは斑。葬儀屋です…。」

えっ?わかりずら…!!こっちのかしこまった少女が婚儀屋の斑〈はだれ〉ちゃん?でこっちの強気な少年が葬儀屋の斑〈まだら〉君…。

「斑!謝らなくていいんだよ!!」
「でも斑。いきなり叩くのはどうかと思うよ…。」
「まぁまぁ落ち着いてくださいよぉ…。詩句。挨拶されたとおりですよぉ。なんだかリコリス氏がよんだみたいで…まぁ彼はもどってきてないんですがねぇ…。」

…リコリスさんは読んでたんだ。婚儀屋が必要になることを。

「おいら達は反乱の時から柊と敵対してたんだ!おいら達は竜の末裔だから結構戦力になったんだぜ!!」
「…そのせいで成長がおそいんですけどね。今回はリコリスさんに仕事があるからといわれて一時休戦ということでやってきました…。」
「はい!!ありますあります!!実は…—」

ボクはホトソンさんとフローラさんのことを話す。

「…ステキ。ぜひやらしていただきます。柊さんとさっそく街にでて準備します…」
「あぁ!おいらはここで待ってるから!!詩句と話したいこともあるしね!」
「お願いします!あ!ホトソンさんの宿によってください!」
「了ー解!んじゃ詩句店番頼みましたよぉ」

そういって2人は出ていった。

「よし!ナイス斑!!詩句、お前の涙が今回の本当の目的!少しぐらいいいだろ?」

斑君は柊さん達が行って早々きりだした。

「いったいなんのために使うの?」
「そりゃぁ柊を殺すためだよ!なんたってあいつは俺の鍵爪も牙も息もなにもかも灰にしちまうからな。」

あぁさっき恐れていたことが…。

何でも願いが叶うということ。それは憎たらしい人も消せるということだ。

「断るよ。ボクはそんなことのために使いたくない。」
「そんなこと言える立ち位置にいると思ってんの?僕らは竜だ。君が今いる街だって本当の姿になったら踏みつぶせるんだよ?」
「柊さんがいる。だから君らは最初から実力行使できないんでしょ?」
「そうだよ。なんだ“詩句”並みに頭はきれるんだね。でも僕らだって結婚式ぐらいつぶせる。」

そう言われボクは新しい考えへたどりつく。今回の結婚式の実権を握っているのは斑ちゃんなのだ…。

「ね?わかったでしょ?君に選択使はないんだよ。」
「…わかったよ。でも使うのは結婚式が終わってからにしてよ。不備があったら困るからね」
「了解♪」

斑君は笑った。ボクは昨日と同様、またタマネギを切った。