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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.78 )
- 日時: 2010/05/06 20:30
- 名前: 譲羽 (ID: M2SneLVI)
【26,5】
詩句が鏡を割ったのと同時に蓬が飛び込んできた。リコリスにつかみかかろうとするのを俺は止めた。
「離して紅!!こいつは…!詩句の魂を!!」
リコリスはフードを取り、蓬が笑っている顔を演じる。
「そうよ?詩句が望んだの。文句なら詩句に言いなさい!!」
「くっ…」
蓬が歯ぎしりする。俺は蓬を離した。
詩句を見ると鏡の破片を全身で受け止めるように硬直している。柊はそれを無関心な顔で見つめていた。
いつも柊は人が死ぬときこういう顔をする。いったい何を考えてんだかわからない。
蓬はいつのまにか泣いていた。俺は蓬を近くのイスに連れていって座らせた。
「あははははははははははははははははははははは」
詩句が急に笑った。そのまま倒れる…—
柊が受け止めた。やっぱり無関心な顔をしていた。
「リコリス。詩句の魂を返しなさい。かわりに柊の魂を4分の1。差し上げます」
いつもの陽気さはない冷たい声。柊の本当の性格。
「わっかりましたぁ。」
柊の陽気な顔を演じて言う。鏡を取り出して、後はいつもと同じ行程。何度も見ているが俺はいつもこの光景が大ッッッッ嫌いだったので目を背けた。柊が倒れる音が床に響く…。
「ひ、柊?ちょっとリコリス…柊は?」
俺が見たときには、蓬が心配してすぐ駆け寄っていた。
「大丈夫。死んでないわ。ただ4分の1も一気に取られるのは初めての上に前々から少しずつ取られていたから、それが少し響いただけ」
そう言ってリコリスはフードをかぶり直す。
斑と斑の双子。詩句に柊。今回はたくさん犠牲者が出た。
全てリコリスのせいと言ってしまえばそうなる。
やれやれ…リコリスは怖い。できれば一生敵にまわしたくない相手だ。
俺は気を失った柊と詩句を肩に乗せると、静かに2階へ上がっていった。
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