ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.79 )
- 日時: 2010/05/06 20:30
- 名前: 譲羽 (ID: M2SneLVI)
【27】
ボクが起きるとまたベットの上にいた。手とか腕とか切り傷満載で…。今回は喫茶店の2階の部屋だった。隣では柊さんがベットの上で上半身だけおこして遠くを見ていた。
「詩句も起きたんですかぁ?どうやら柊も詩句も気を失ってしまったようでぇ」
ボクが起きた事に気がつき柊さんは話しかけてきた。
「なんでボク生きてるんですか…?確かボクは魂をリコリスさんに……」
「柊が肩代わりしましたよぉ?まぁこの様ですがねぇ」
柊さんはボクが気絶してからのことを話してくれた。柊さんもすぐ気絶したらしいので話は短かったが…。
「詩句も変な子ですねぇ。会ったばかりの変な双子を助けるなんてぇ。」
「そうですよね。ボクも何でかわかんないんです。ただ、きっとボクの前でだれかが苦しむのが嫌だったんだと思います…。」
本当かどうかは分からない。もうあの時は過ぎ去ってしまったし、戻りたいとも思わないから…。
「詩句らしいですねぇ。でも今回はリコリスの策中でしたよ?今回は遠回しに柊の魂を奪われてしまいましたぁ」
…なるほど。別段双子の魂やボクの魂が欲しかったわけじゃないのか…。柊さんがボクを助けることを知っててのことか。
リコリスさんは怖いなぁ…。
そう思ってると蓬さんと御影さんが入ってきた。
「柊ぃ!!心配したんだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
蓬さんが泣きべそをかきながら柊さんにダイブする。柊さんは避けることもできなくて困っていた。
「よぅ!2人とも起きたか。良かった良かった。」
「御影氏。せめて柊のことは柊の部屋に運んで欲しかったですねぇ。ここは御影氏が寝るとこだし、そもそもここは日当たりが悪いんですよぉ…。」
「だって詩句の部屋は鍵かかってたし、柊の部屋はそもそも鍵穴もないのに開かないしよぉ…てかひどくね!?俺1番日当たり悪いとこに泊まってんのかよ!」
「いいじゃない!!私は柊が無事なら部屋の文句なんか言わないわ!!柊?何か欲しいものある?なんでも持ってきてあげるわ!!」
「いえいえぇ。もう起きあがれるので大丈夫ですよぉ?」
そう言って柊さんは蓬さんをどけてベットから出る。
「無理しないでよ!!柊。」
「そういえばリコリス氏が見あたりませんねぇ?」
蓬さんをスルーして言う。
「リコリスなら異世界に出かけたよ。きっと自分の鏡屋に行ったんだ。」
「そうですかぁ…。まぁ下に行って紅茶でも飲みますかねぇ」
「ボクがいれます!!」
ボクは起きあがろうとするが身体が動かない。
「お前は動くな。最初から魂半分もやっただけでもつらいのにそれをもう1度戻してんだ。」
「御影の言うとおり!!それに鏡の破片もろにくらってたし!!」
蓬さんと御影さんに怒られた。
「詩句にも紅茶をプリンにして持ってきてあげますよぉ」
「柊さん…病人じゃないんですからボクを急に甘やかさなくていいです…」
「そうですかぁ?紅茶そのままじゃ飲めないでしょうし…身体動かないみたいですしぃ」「腕と手くらい動きます!」
ボクは腕と手を動かしてみせる。切り傷が開いて痛かったけど…。
柊さんはそれを見るといつものように笑って降りていった。御影さんもそれに続く。
「詩句。エルザとホトソンさんね。とっても喜んでたよ?詩句はかぜひいたっていたら心配してたから、動けるようになったら顔をみせてあげてね?」
蓬さんはそう言うと部屋を出ていった。ボクだけが残される。
酒を飲んでの幸せ。結婚しての幸せ。死んで幸せ。ひとりひとりの幸せは違い、人はそれを願い追い求めて行く…。
ボクは天井をみて考えた。
ボクの幸せは?
答えは分からない。実は分かってるのかもしれない。
でも気づくのはもう少し先か。もしかしたらもう過ぎてしまっているのかもしれない。