ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ただいま更新休…。  ( No.82 )
日時: 2010/06/19 21:42
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)

【28_1/2】
1日に5回は紅茶をいれ、1週間に6回は街にでるのがボクの日常に定着されている。(旅人ノ街は1週間=7日。)残り1日は1日中、喫茶店と2階の部屋の掃除だ。

喫茶店にはいつも柊さんがいて、あとは蓬さんや街の顔見知りであるホトソンさんとフローラさん。雅焔さんが入れ替わり立ち替わりくるぐらいだ。

リコリスさんはホトソンさんとフローラさんの結婚記念日となった日でもあり、双竜の2人が死んだ日でもある日から全くボクらの前に姿を現していない。

まぁ…双竜は死んだというよりボクが殺したんだけど。

あの時の記憶は今となってはもう虚ろになっている。

魂がなくて、痛みが凄かったからきっとその気持ちだけが印象に残ったんだろうけど。

「暑いですねぇ…。」 

柊さんがカウンターでぐったりとしている。

最近は気温が高く風も吹かない日が続いている。半袖半ズボンでも暑いぐらいだ。

だがそんな暑さにも負けず、今日は雅焔さん。そして4ヶ月前結婚いたばかりのホトソンさんとフローラさんが来店していた。

ボクはといえば、これから身につける必要があるスキルだと思われる“アイスティー”を上手につくる方法を覚えるべく、朝からカウンター裏で悪戦苦闘していた。

「…できました…。こ、今度はどうでしょうか?」

せっかく来店しているので試飲してもらっている。ちなみにこれで3回目。

「…ま、まぁいいんじゃねえか…?な、なぁフローラ。」
「………だめよホトソン。ダメな時はちゃんとそう言わなきゃ…逆に失礼。」
「そう言ってもなぁ…。坊主も頑張ってるしよぉ…。」

……やっぱりNGなようだ。

「…雅、雅焔さん。どうですか?…柊さんは?」

ボクは2人に振る。

「……冷たくて良いんですけどねぇ…。薄いのは変わりませんねぇ…これなら氷だけのほうがおいしいかもしれませんねぇ…。」
「…甘さがない………!!おぉ!詩句!下に砂糖が溜まってる!!おいしい!砂糖!」

…これで3連敗。

どうやら普通にホットでいれる濃さでは氷で薄まってしまうようだ。また、冷たいので砂糖が溶けない…。

「………」
「気を落とすなよ坊主。…ほ、ほら茶葉が悪いんだ!きっとそうだ…。」

ホトソンさんが黙っているボクを無理矢理励ます。

「ホトソン。そんなことはありません…花もそうですが、どんなにイマイチな物でも使いこなすのが一流ですから」

…フローラさんに見事に砕かれた。

「頑張って詩句!あ!柊さん。口直しに甘いシャーベットが食べたいな!」
「かしこまりましたよ雅焔氏。ホトソン氏とフローラ嬢もいかがですか?」
「…いただきます」
「俺もいただくかな。坊主も少し休んで食え!」
「はい。そうします。柊さん!ボク手伝いますよ!」
「大丈夫ですよぉ。みなさんと話していてください」

柊さんにそう言われ、ボクは皆が座っているテーブルにイスを1つ足してそこに座った。

「突然ですけどみなさんよく喫茶店に来ますよね?暑くないですかここ?」
「…確かにここは来るのも面倒だし、1番高いところにあるから暑いはずですけど…暑さは感じられないんですよね…。」

1番高いところにあるってことは普通に考えて1番太陽に近いってことだ。

だがフローラさんの言うとおり、暑さは感じられない。寒いとか涼しいってわけでもないけど…。

「確かに!散り逝き通りは街の1番下の通りだけど、あっちは寒すぎてさぁ。」
「そうか。なら今度から酒とか水とか、冷やしておきたいのは散り逝き通りに置くことにするか。なんせ本通りは人の熱気が凄いからな!」
「…やめたほうがいいですよ。ホトソンさん。散り逝き通りに置いたら盗まれます。」

散り逝き通りは裏通りとも言われるほど治安が悪い。よく雅焔さんはいられるなぁ。

「そうだったなぁ。雅焔の嬢ちゃんを見てるとそんなの忘れちまう!」
「そっかぁ。じゃあ僕は散り逝き通りの看板娘だね!」
「いいなそれ!!宿の看板娘にもならねえか?」
「ホトソン。私がいます…花屋もあるのでいつもとはいきませんが…。」
「わかってるよフローラ。嘘だ嘘。」

ホトソンさんとフローラさんがいると、明るくていい。まぁ別にいつも暗いってことではないが…“華やか”になると言うべきだろうか?