ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ただいま更新休…。  ( No.83 )
日時: 2010/06/19 21:39
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)

【28_2/2】
「柊の喫茶店が暑くないのは昔、歌静がまじないをかけてくれたからです。」

柊さんがシャーベットを運んできながら言った。ボクはもう1つイスを運んでくる。

どうやら今日のシャーベットはスイカ味のようだ。

「ひぅえ〜ふぃいはぁぎはふぁんにはふぁくさんちょもふぁふぃが……—」

雅焔さんがシャーベットを口に押し込みながら言う。

「…雅焔ちゃん。話したいことがあるなら食べてからいってください…わかりません」

フローラさんが指摘する。

「ゴメン、フローラさん。えっとね、“へぇー柊さんにはたくさん友達がいるんだね”って言いたかったんだ。」
「確かにな。紅の坊主も柊の仲間なんだろ?確かフローラの先輩の……—」
「…蓬先輩ですか?」
「そうそう。蓬の嬢さん。あれもだろ?一体何人いんだよ?」

柊さんはスプーンを止め、上を見上げながら考える。

「正式には柊を混ぜて12人いましたね…。反乱起こしてもまだいるのは6人きりですけど…」
「反乱!?おいおい血生臭いな。縁起でもねぇ。女の取り合いか?」
「ううん。男の取り合いだよ?ね?柊さん♪」

雅焔さんが口を挟む。まぁ“詩句”は男だけど、その言い方は誤解を招く…。

「…そうですねぇ。まぁ昔っていってもついこの前のことですけどね…。」
「ついこの前!?でも柊さんは僕が来る前からここにいたんじゃ…」
「世界で時間が違いますからねぇ。柊の時計ではついこの前ですけど、旅人ノ街では何年、何十年前なんでしょうねぇ。」

…てか柊さんの時計って…何なのだろう?腹時計?

「え?でも俺は柊さんの喫茶店を最近知ったんだぜ?」
「あ!ホトソンさん。それは街の特性なんですよ!!知らない場所は存在しないし、知ってる場所ははっきり存在するんです。」

雅焔さんが5つ目のシャーベットを食べながら説明する

さすが情報屋といったところだろうか。

…。そういえば最初のうちはボクはほとんど誰かに連れて行ってもらったり、一緒に行ったり、教えてもらったり。ひとりで行くことはなかったな…。

「雅焔氏の言うとおりです。異世界へ渡るのもそんな感じですねぇ。」
「…異世界、ですか。この喫茶店には裏口がありますが、あれが異世界への入り口ですか?」

フローラさんがホトソンさんの口にシャーベットを運びながら聞く。

「えーとですねぇ。異世界にも行けますけど、この街のどこかへも行くことができると思いますよぉ?まぁオススメしませんがねぇ。並な人のあやふやな記憶じゃあ逆に帰ってこれませんからねぇ。旅人なら“なれ”があるのでいいですが…。」

…雅焔さんと柊さんが言う話しによると強い情報と記憶がないと街も世界も歩けないようだ。

ということはまだ知らない場所だってあるってことだ…。柊さんも雅焔さんも誰も知らない場所が、誰も知らない人が……—