ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.9 )
- 日時: 2010/07/14 17:56
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【3】
1階に降りるとまさに喫茶店というような構造になっていた。
出入り口を入り真っ直ぐの所にカウンターがあり、カウンター裏にはキッチンと裏口がある。
壁にくっついて置いてある棚には、紅茶缶や珈琲豆の入った瓶。サイフォンやティーポットなどが並べられている。
4人掛けの丸テーブルがサイコロの4のような配置で置かれており、真ん中には長方形の6人掛けのテーブルが2つ置かれていた。
隅にあるテーブルにはもう先客がいた。
くすんだ紫のローブを羽織っている。
こっちを見られ、ボクは一瞬立ちすくんだ。
顔はフードと襟で片目少しと鼻ぐらいしか見えない……。性別はどちらなのだろう?
「リコリス氏のいったとおりでしたよ」
柊さんはカウンター裏に行きながら話しかける。
「そうでしょう? 少年、ここにどうぞ」
リコリスさんはそういって前の席を指さす。ボクは戸惑わずに座った。
「…………」
沈黙。柊さんは鼻歌を歌っている。
「リコリスさん……ですよね?」
恐る恐る話しかけてみる。
「そうです。ボクはリコリスっていいます。あなたは記憶喪失何ですよね?」
「はい……。リコリスさんはボクのこと知ってるんですか!?」
「知ってますよ」
「え? 本当ですか!! 教えてください! 何でもいいです!」
顔が見えなくて不気味だけど、いい人だ……。
「いい人なんて……ありがとうございます。でも教えるかわりに魂もらえますか?」
「魂?」
さりげなく心を読まれてる……。魂好きってのも柊さんのいったとおりだ。
「魂は確かに好きですよ。で? くれるんですか?」
リコリスさんは本気みたいだ。
「アハハ。やめたいと方がいいですよぉ? 少年。危ないですからねぇ」
「アハハ。柊氏は黙っててもらいたいですねぇ……。どうしますか?」
口調もころころ変わってる……これが多重人格!?
まるで鏡のようだ。
前言撤回。良い人、悪い人の問題じゃない! 変人だ。
「変人? 失礼ですね。ボクはみんなと少し違うだけなんですけど」
少しじゃないし、心を読むのもやめてほしい。
「すいません」
……心を読んだ上で謝られた。いきなり下にでられてもな……。
「あ! いえ……。残念ですけど魂はあげられません。でも名前だけはお願いしたいです」
「いやです! 柊さんに考えてもらったらどうですか!?」
なんだか怒ってしまったみたいだ。ボクは柊さんを見る。
いきなりの無茶振りだったが、暢気な顔は変わらない。
「困りましたねぇ。んん……詩句(シク)なんていかがですか? リコリス氏、どう思います?」
詩句? しく? どこからそんな名前がでてくるんだろう……。
ボクはリコリスさんを見る——
驚いているのだろうか? 金色の眼がフードの奥から見え隠れしていた。
「詩句……。柊氏、本当にそれでいいんですか?」
「えぇ。柊は結構気に入ってたんですからねぇ。"あの子”」
柊さんもリコリスさんも黙ってしまった。
詩句。ボクの仮の名はなんだか不吉だ……。