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Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】:オリキャラ募集!(職業限定です。   ( No.90 )
日時: 2010/06/20 11:02
名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)

【34】
“コンコン”

と、この前の教訓をいかし、館の扉を叩く。

「……………」

返事がない。伊咲夜さんは出かけているのだろうか?

「伊咲夜さーん!詩句…いや…詩句じゃない詩句ですけど?」
「……………」

館に向かって叫んでみても、帰ってくるのは沈黙だった。

扉は開いているようだが、勝手に開けて入ったらまた泥棒かなにかにまちがえられてしまう…。

困ったと思いながら、庭が見えるように扉の前に腰掛けた。

「!?」
「こんにちは。詩句さん」

伊咲夜さんが青い薔薇をかかえてそこに立っていた。どうやらずっと後ろにいたみたいだ。

ボクは急いで立ち上がった。

「こんにちは。伊咲夜さん」
「…詩句さんには館に向かって叫ぶ趣味があるんですね」

…また思い込みされている!

「あ、いえ別に、伊咲夜さんが見えなかったというか、気づかなかったというか…あの、その薔薇綺麗ですね。」

言い訳しながらそっと話をかえる…。

「この薔薇ですか?詩句様から送られてきたものをその昔、私達使用人が育て、増やしたものです。今は…私ひとりでやってるんですよ?」
「“詩句”さんは青い薔薇が好きなんですか?」
「はい。青い薔薇の花言葉は“不可能・奇跡・神の祝福”。詩句様と私の故郷でもある異世界では、他の世界を知らず、科学で成り立っていました。魔法は空想のものだといわれて迫害されてたんです」

旅人ノ街は他の世界と繋がるのが性の世界だ。だが世の中には一切他の世界と関わらない世界もあるらしい。

「魔導家系の詩句様のお母様でありました女主人様は旦那様に魔導だからと殺されて…魔導の血を引く詩句様もその後つらい仕打ちをうけていました。」

伊咲夜さんは目を伏せる。

「でも、“詩句”さんは魔法に囲まれて育ったって…」
「はい。旦那様に見つからないよう、私を扉の前に立たせ、秘密の書斎で読んでおりました。そして、最初に魔法で創ったものが、この青い薔薇でした…詩句様は旦那様に見せることもせず、真っ先に女主人様のお墓へと持っていきましたっけ…。」

…科学の世界にて魔法でできた青い薔薇。それは奇跡であり、絶対にできない不可能な技。まさに魔法は神の祝福だったのだろう。

伊咲夜さんはその頃のことを思い出したのか泣いていた。