ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】:オリキャラ募集!(職業限定です。 ( No.97 )
- 日時: 2010/06/21 21:02
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【37】
「…詩句さん。ちょっと後ろ向いててください。」
「え?」
伊咲夜さんは突然いった。
「あたりまえでしょう。ここは館の心臓ともいえるほど大事な場所です!詩句様と私以外、開け方を知られてはなりません。」
…納得。てか、伊咲夜さんは随分信頼されてたようだ。
ボクは後ろを普通に向く。
“ガンッッ”
いきなり頭をぶたれた。ぶたれた自分にも聞こえるくらいの鈍い音だった。
ボクはそのまま気を失った。
起きると、目の前に伊咲夜さんがいた。
まだ頭が痛い。触ってみるとたんこぶができていた。
…この場合、たんこぶで済んでよかったというべきだろうか?
「伊咲夜さん!いきなり叩かないでくださいよ。ちゃんと後ろ向いてました。」
「もしかしたら後ろにも目が付いてると思い、その対処のためでした。だいたいこの記憶の間でそんな大声ださないでください。」
…後ろに目?ボクは化け物か!
伊咲夜さんのいわれ、周りを見渡すと円状の部屋に入っていた。
床にはいくつもの大小の魔法陣が重ねて書かれており、部屋の中心には巨大な水晶玉がおかれている。
壁は5本の柱がある以外、すべてガラスの戸棚となっており、いくつもの小瓶が入っていた。小瓶の中では色とりどりの光がまたたいている。
まぁ、ぶっちゃっけ魔法使いの部屋って感じだ。
「詩句様の記憶は全部で100本以上。今回はその中から重要なのをいくつかお視せします。本当は貴方のような人に視せるのはもったいないものなんですからね」
「わかってますよ。ちなみに危険とかはありませんよね?この部屋。」
いちおう聞く。何かに触れると石になるとか、隠し部屋に入るとか罠がありそうだ。
「…そうですね。いちおう貴方はその水晶玉から離れないでください。なにがあるか、全部は把握しておりませんので」
…把握してないくらいあるのか。
ボクは1歩真ん中の水晶玉に近づく。
「では、最初の記憶。これは柊さんが本家にやってきた時です。」
小瓶を1つ棚から持ってきていう。中に入っているのは赤い光ではなく、赤い炎が燃え盛っていた。遠くから見れば、光に見える。
伊咲夜さんは水晶にそれを垂らす。どろっとしていてさっきの絵を思い出した。
だが、水晶に触れるやいなや、また燃えだした。そのまま水晶が載っているテーブルに広がり、床へ…。5本の柱へと渡り、部屋は大炎状となった。
ただし、暑くはないじっと見つめていると、みるみる部屋の風景がかわっていった。
そこは、大きな屋敷の庭の丘だった。1人の黒髪の少女と1人の男が話している。
若かったが、男は柊さんだった。きっと少女は詩句だろう。年はボクと同じくらいだ。
「やぁ、君はいつもここにきてますねぇ。あ!怪しいものではありませんよぉ?柊。ひいらぎ。ただの旅人です」
「うん、あなたは怪しいひとじゃないってわかる。柊?旅人?どこの街から来たの?砂漠を越えて?それとも海?」
「いえいえぇ、柊は友達と一緒に世界と世界の間を越えて旅をしてるんですよぉ?」
「?」
首を傾ける詩句に柊さんは説明する。
「…へぇ。素敵。ワタシも行ってみたいなぁ。」
「そういうだろうって友達がいってました。どうでしょう?柊と一緒にきませんか?」
柊さんが誘うが、詩句は首を縦にも横にも振らず、俯く。
「お父様が許さないよ。本当はね、ここに来てはいけないし、青い薔薇もつくっちゃいけない。ワタシが歌ってもいけないことになってるんだ。」
「知ってますよ。君のその髪も本当は青色でしょう。」
柊さんの顔から笑みが消える。冷たい声が響く
「?違う。ワタシは生まれたときから黒髪。お父様似なの。確かにお母様は青髪だったけど…でもアルバムにあったもの!」
「それは君の母親がそうしたから。母親は君も青髪だったら殺されると思ったのでしょうね」
「殺される?違う、違う違う!お母様は殺されたんじゃない!お父様は事故だったって!伊咲夜もそんなこといってないし」
「どんな事故か聞いたことありませんよね?伊咲夜…あなたのメイドさんは聞かれなかったから答えなかったまでですよ」
詩句がどんどん追いつめられていく。
「でも、違う。だってお父様が!!…好きな人を殺せるわけない。」
「そう!君の父親は母親を嫌ってた。ただそれだけの話ですよ。」
詩句は柊さんの話を聞き、表情が変わる。
柊さんの顔には笑みが戻る。
「ねぇ、柊さん。あなたのいってることは本当?」
「柊のお友達は嘘をつきませんからねぇ。こういう時は」
「そう」
詩句がまた俯くが、すぐキッと柊さんを見つめる
「ねぇ、あなたはワタシを友達にするために来たのが事実だよね?」
「えぇ。そうですよぉ?じゃないとこんな世界来ませんよ」
柊さんは肩をすくめる
「取引しようよ。ワタシがあなたについて行くかわりに、お父様を殺して」
「いいですよぉ?柊のお友達にはそういう専門家もいますからねぇ。…そうですねぇ、今度柊が迎えに来る時にしますよ」
「よろしくね。柊さん」
詩句が笑う。柊さんが笑う。
「柊ごときが、“最初の魔法”によろしくといわれるのは光栄すぎますよ」
そこで記憶は終わった。