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Re: 堕落した天使(微グロ注意!)〜オリキャラ男・女募集中!〜 ( No.20 )
日時: 2010/04/08 12:17
名前: 野々花 (ID: F35/ckfZ)

0-5「支えとなって」

「ディナ」
「シード…。どうしました?」
「カイリ君のこと、どう思う?」
「…。今は頼りなくて邪魔ですが…。銃弾を自由に操るなど、かなりの能力の持ち主と思われます。最も、それが覚醒すればの話ですが…」
「カイリ君のことがだいたい解ったよ。カイリ君は人に嫌われたくない。だけど必要以上に自分のことを知られたくない…。相手を傷つけることもなく、自分が傷つくこともない…」
ディナは相槌も入れずに、僕の目も見ずに、ただ窓の外の月を眺めていた。
「そんないいことしかない間が欲しいんだ。必要以上に干渉せずに、必要以上に干渉されずに…。僕らに似てるよね?」
「そうですか?私達は他人に興味を示さず、また他人も私達に興味を示さない…。ただそこに在るだけの人の形をした物ではありませんか?」
「確かにね、嫌われたくないから近付く。でも、近づきすぎたら今度は自分が傷つく…。そんなカイリ君を支えることができるのは僕とディナだけだよ」
リンとカイリ君は寝ていた。静かな寝息を立ててとても幸せそうだった。
「何故私が…」
私が人を支えるなんて思いもしませんでした。私はただ、私と同じだけど違うシードさえ居てくれればよかった…。シードしか必要なかった。あのマスターも私を利用しているだけ。私を見てくれているのはシードだけ…。あの方には感謝しています。でも、あの方の思惑通りに動く人形であることは否定します。

私が信用するのはシードだけ。私を知ってくれているのはシードだけ。けれど…。私はいずれシードも傷つける。もう完全な悪魔になってしまった私は…。

「ディナ、こっちにおいで」
今までの沈黙が破られ、シードの優しい声が響く。
「…」
言われたとおりにシードの傍へ向かう。
「ディナ、冷たいね…」
細い身体に腕を回した。少しでも力を入れると壊れてしまいそうに儚かった(実際はどれだけ力を入れても壊れないが)。
「貴方は温かいです」
拒絶はしません。求めはしません。だから0-1と同じだと言うのですか?
「…。ディナが自分の感情通りに動けないことは知ってる。でも、少しは自分が思ったことをそのまま言ってみたらどうだい?」
「…?」
解りません。私は私自身を偽っているというのですか?私は自分が思ったとおりに動いているつもりです。ただ、自分勝手にならないようにある程度人の言うことに従っているだけです。
「ディナは自分が思ったままに動いている気分だろうけど、傍から見ると違うよ?マスターの思惑通りにしか動いていない」
「…」
それは否定します。…いえ、否定するのではない。否定したいのです。
「逃げたいんでしょ?なら逃げなよ。僕も、リンも、カイリ君も逃げたいと思っている。…。その為にはディナが必要なんだよ」
「私が…?」
「そう。ディナじゃないと全てのセンサーから逃れ、それを破壊できない。ディナの元は機械だから。同じ機械はそれを探知することができない」
「…」
「センサーをすべて破壊して逃げるんだ。世界は僕らを悪と蔑むけどね」
「…」
『逃亡』それはマスターの意思に対する反逆…。マスターは悲しまれるでしょうか?自分が今まで愛情を込めて造り上げてきた物が裏切ると…。
いえ、憎みます。あの方は悲しみなど感じません。私を憎み、殺そうとするでしょう。そして私をまた一から造り直す。今度こそ自分の思惑通りになるように…。
「やってくれるよね?」
「…はい」
私は、人形ではありません。