ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 堕落した天使(微グロ注意!)〜オリキャラ男・女募集中!〜 ( No.59 )
- 日時: 2010/04/09 16:54
- 名前: 野々花 (ID: F35/ckfZ)
0-7「殺られる前に殺れ」
「…。僕を何だと思っているんだい?」
夜の静寂に冷たい声が響く。少し低めで、ここまで怒ったような声は初めて聞いた。
「ディナの片割れだ」
「僕にディナを殺せなんて…。よく言えますね。貴方は今までディナを娘のように愛し、育ててきたではありませんか」
「その愛娘に裏切られたのだ。悲しみを通り越して恨みだな。解らないか?アイツは人間ではない。そのうちお前もアイツに殺られる殺られる前に殺れ」
「…」
そう、僕もディナと同じ。この人には逆らえない…。ディナに偉そうなことを言っておいて…。ディナという『善』を消そうとする僕は『悪』だ。
「…はい」
僕の力ではディナを消せない。だから、その時にディナに消してもらおう。それが望みだ。僕の唯一の望み…。信じていた人に消してもらいたいよ。
「…」
ディナの寝室に忍び込む。寝顔は穏やかで、美しかった。月の逆光に照らされたディナは女神としか言いようがない
「…ごめん」
君が起きていたのなら、今の僕の感情では上手く言い表せないことを必死で伝えるよ。「ディナを見るたびに胸が締め付けられる。ディナが傍にいてくれるだけで幸せだった」心から、そう思うよ…。
ナイフを取り出して胸に向けて振り上げた。勿論、ただのナイフではディナのアンドロイドボディを突き抜けることはできないので、かなり硬いナイフを用意した。
「!!!!!」
ナイフがその身体を突き抜けたとき、ディナの体が大きく揺れた。そして、鮮血の飛沫が飛び散る。
「…」
何故か笑っていた。こうも簡単にディナを殺れるとは思ってなかった。そして、目も覚まさずに眠り続けているなんて演技だ…。
頬に温かいものが伝った。僕はそれを理解できない。
「シード様…?」
「!」
誰がこんな時間に…!?
「シード様…!!何故です…?」
「上からの命令だよ」
レイランちゃんか…。こんな現場を見せちゃうなんて…。
「…!」
「上からの命令」だなんて…。そんな、そんな冷たい言葉で…。
「レイラン…?うるさいわよぉ」
眠そうな目を擦ってリンが起きてきた。
「何かあったの…?」
「ふふっ。ディナが死んだ」
部屋に入った瞬間に解ったよ。血の匂いがしたから。
「シード!?何考えてんのよ!?」
「何故だい?リンはディナが嫌いだったろう?」
「それはっ!でも、こんなときにそんなこと言ってられないわよ!!」
確かに嫌いよ。大嫌いよ…。でも、いないと寂しいのよ。ストレス発散する相手がいなくなっちゃったじゃない!!
「シード君、どうして…?ねぇ、答えてよっ!!」
「…」
温かいものは流れ続ける。目から出ているみたい。
「…泣いてるの?」
「!」
涙?これが涙…?僕は何故泣いている…?胸の奥が苦しい。どろどろしたものがある。
「自分の意思じゃなかったんでしょ?ディナ殺ったの」
「…もう、解らないよ…」
こういうときにディナは僕を助けてくれた。優しい言葉で慰めてくれたわけじゃない。胸を貸して泣かせてくれたわけじゃない。ただ、横で黙って立ってた…。
それだけで『大切』と感じていた。ディナがいないと、寂しいよ…。上の命令だけで大切な人を消すなんて…。僕は最低だ…。
「出てって…」
「え…?」
「出て行きなさいよ!!あたしたちもこうするつもりでしょ!?出ていけ!!今すぐ出てけ!!」
「リン…。解ったよ」
正直、ディナがいないここにいても意味がないし。でも、誰が僕を受け入れてくれる?
「…」
ボク、こういうときに何もしてあげられないんだ。やるときにはやる性格だけど…。ここに来てまだそんなにたってないし。誰が誰を大切に思ってるのかも知らない。ボクは無力だ…。
「バイバイ」