ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 残酷な女学生 ( No.9 )
- 日時: 2010/04/09 22:49
- 名前: 朔羅 ◆love33RPPg (ID: NOphWmYz)
- 参照: なんか今日は好きな人とよく会う日だったなあwwwwwwクラス違うのに
第1話
時は、大正12年——……。
東京の街は、昔より近代化が進み
電車、ラジオ放送、喫茶店など
モダンなものが、たくさんあった。
そんな東京の街に住む私、沢立多恵子の物語。
「あつ……」
8月末の東京の最高温度は、30度を上廻った。
人々は、白い服を着て汗水をたらしながら、歩いている。
私も、汗で着物がびしょびしょになり、今すぐにでも風呂に入りたい気持ちだ。
——もうすぐ、もうすぐ家につく。
私は、大好きな自分の家のドアを開けた。
私の家は、文化住宅で西洋風の家なので
よく友達から「モダンだね」といわれる。
それが、ちょっとした自慢であった。
そしてもう1つ……自慢できることがあった。
「お姉ちゃん、お帰り!!」
「姉さん、お帰りなさい」
「多恵子、お帰り」
私の妹の希紅子、弟の健二、お母さん。
そして、昼間は仕事でいないが、お父さん。
私達5人家族は、すごく仲が良いこと。
「お姉ちゃん、いい詩集あった?」
希紅子が、心配そうに私に尋ねてきた。
私は、袋から花柄の絵が描いてある
詩集をとりだすと、そっと希紅子に渡した。
「はい、あったわよ」
「きゃあ! ありがとうっ」
どうやら、高等女学校1年の希紅子のクラスでは
私が買ってきた詩集が流行ってるらしい。
「姉さん、これみて」
健二が、色とりどりの厚紙をみせてきた。
……めんこだ。
小学6年生の、健二のクラスではめんこが
流行っていた。
そして、高等女学校3年の私は……——
とくに、流行っているものなどはなかった。
でも1つだけ、毎日欠かさずしてることがある。
私は、自分の部屋にいくと、まどをあけた。
蝉のけたたましい鳴き声、夏休みで
はしゃいで遊ぶ子供達の声が聞こえてくる。
そして、上をみあげた。
真っ青な空に浮ぶ、白い雲。
ああ……夏だ。
私は毎日、晴れでも雨でも曇りでも必ず
1日1回は空をみあげることにしていた。
「多恵子ー! ご飯ができたわよー!」
「はぁい」
お母さんに呼ばれて、私は居間にむかった。
この幸せが、ずっと続かないとはしらずに。