ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re:           残酷な女学生 ( No.14 )
日時: 2010/04/10 16:40
名前: 朔羅 ◆love33RPPg (ID: NOphWmYz)
参照: 新しい文房具ほしい、髪の毛きりにいきたい……パッツンの前髪がいいっ!!

第2話



夏休みも今日で終わり。私は急いで
残っている宿題に、手を付けた。
宿題……といっても、裁縫などの宿題もある。
夏休み中に、なにか1つ作れといわれたのだ。
高等女学校では、良い妻になり賢い母になるという
教育がされているため、家事などの授業が
非常に多い。高女を卒業した生徒は
大体は、花嫁修業をしたあと、結婚することになる。
職業婦人として、就職する人もいるが
その人たちもいずれは、結婚することになっていた。



女は——……
     男に従う。
それがあたりまえ。
     女の幸せなんて、許されない。





そう思うと、日本中の男性が憎く思った。
女性に生まれてはいけなかったですか?
女性は、男性に従えばそれでいいんですか?


「ふう……」

なんとか、問題集を終えた私は、そのまま
部屋の床にごろんと転がった。
床は、冷たくてとても気持ちがいい。
まるで、世間のねじれを忘れさせてくれるようだ。
**


「多恵子ー」


私は、居間でくつろいでいると
母が私に声をかけてきた。私は、そのまま
視線を母のほうに移し、返事をする。
母は、冷たい麦茶と、団子がのせてある
おぼんを持って、たっていた。


「これ、健二のほうにもっていってくれる?」
「ええ、わかったわ」

私は母からおぼんをうけとると、健二の部屋へ向かった。


「入るわよ」
「どうぞ」

少し低くなった健二の声がして、私は部屋に入る。
健二は、自分の机で一生懸命勉強していた。
……無理も無い。来年の冬には、健二には
中学受験という、大きな壁が待ち受けている。
他の中学受験者は、5年生あたりの頃から
努力してきたが、健二は6年になっていきなり
受験を希望した。そのため、他の受験者より
リスクは大きいといえる。


「頑張ってるわね」
「おう……あ、お茶と団子ありがとう」


健二はそれだけいうと、また問題集に目を移した。
健二の姿と、3年前の私の姿を重ねてみる。
私も、3年前は高等女学校の受験を意識していて
一生懸命頑張った。ほとんどの小学校の友達は
卒業したら、働くため、受験する人は少なかった。


高等女学校、中学校は義務教育ではない。
大体の家庭は、義務教育の小学校6年間を
終えると、家計をささえるために働いていた。
しかし、裕福な家庭はそのまま
受験をして、女子は高等女学校へ、男子は中学校へいくものもいた。
さらに優秀な人は、師範学校へ進む人もいる。
だから、私の家庭は結構裕福なほうだった。


「姉さん」
「なあに?」

健二は、私の顔をみながら、問いかけてきた。


「姉さんってさ、将来の夢とかある?」
「夢?」


夢、夢、私の夢——……?
……ない。あるわけない。


「……とくにないかな」
「へえ、俺さ、将来学者になりたいんだ!」


学者。
健二が学者かあ……。
いいかもしれない。


「へえ、頑張ってね!!」
「おう、俺頑張る!」



いいなあ、男の子は。夢を抱けて。
私達女子は、そんな夢なんて抱けない。
男のために、家庭を支える、専業主婦しか
道は無いといっても過言ではない。


「あ、勉強の邪魔になるから、あっちいってるね」
**


次の日……。
いよいよ、新学期がはじまる日だ。
毎年毎年、この日は憂鬱で仕方がない。
私は、朝起きた後軽くため息をついた。


「じゃあいってきます……」
「いってらっしゃい」


母の笑顔に見守られ、私は家をでた。
でも……これが、これが見納めなんて
思わなかった。








だってね?
今日は、あの1923年9月1日だったから……。