ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Cross Wing   −契約者− ( No.5 )
日時: 2010/04/15 06:43
名前: スペード ◆lLTUeKKhVg (ID: YAjKlDB6)

三話『黒』



「…リオンさん、ミルクコーヒーありがとうございました」
僕はリオンにそう言って、僕は空のティーカップを渡した。しかし、何故かリオンの反応がない。
「…リオンさん?」
僕はそんなリオンに、少し話しかけてみる。すると彼は僕の声に、はっとした表情を浮かべた。
「———あぁ…、悪い。少し考え事をしていてな…」
そう言うと彼は僕からティーカップを受け取り、そして彼の分のカップも持って部屋から出て行った。

静けさが、部屋を包んだ。さて…、ここにいても彼に悪いしそろそろ出て行くかな。“奴等”がそろそろ僕に追いついて来た筈だから…。——腕はまだ痛むけど、移動には差し支えない筈。
「…ありがとうございました、リオンさん。コーヒー美味しかったです」
そして僕は、自分の上着を手に取って、誰もいない部屋に向かってそう言った。リオンが部屋に帰ってこないうちに、僕は部屋の窓から外へと出て行った。


*

「…どうやら、だいぶ寝たみたいだね…」
空を見上げると、もう太陽が空に昇り街はぼちぼち賑わっていた。ふと街の時計を見てみると、もう朝の八時過ぎだった。しかし僕は、…さて、これから移動するぞという時に、僕は暗い路地に入って行った。
コツ…
すると、僕の後を誰かが付いて来た。足音で分かる。…まぁ、その事を分かっててこんな人目の付かない所に来た訳なんだけど。
「——貴方は誰ですか?」
僕は、念のためにその人に尋ねた。だが、見当はついている。恐らくこの人は…

「———…“咎人”…、闇に堕ちタ…人間の臭い…。その魂…俺にヨコセ…!!!」

ズズズズズ…ッ…
その瞬間、目の前の人は狂ったようにそう叫び、突然僕に襲いかかってきた。その人のズボンから漆黒とも言える黒い得体の知れない“尻尾”が見え隠れし、頭にはねじ曲がった…いかにも攻撃的な“角”が二本、不気味な音を立てながら突然現れた。
「———やっぱりね」
僕は呟いた。街に出てきた時から、獲物を見つけた飢えた獣のような鋭い視線を感じていた。おまけに、殺気がむき出しで、全く隠せていない。そして何より、あの容姿…“黒の尻尾と二本の角”…。

———あれは紛れもない“悪魔”の証だ。

契約を結ばれた、悪魔の“イレモノ”にされた動物に必ず現れるという特徴的なモノ、それが尻尾と角。だが、普段悪魔はイレモノの中に身を潜めているので、その尻尾と角は現れない。尻尾と角が出るのは、悪魔が興奮状態…又、魂を奪い取るその瞬間…尻尾と角がこうして現れる。