ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Cross Wing   −契約者− ( No.6 )
日時: 2010/12/04 17:48
名前: スペード ◆lLTUeKKhVg (ID: S8b9wYSL)

僕は胸の前で手を合わせた。そして、滑らせるようにして手を離してゆと、その手から光の帯が現れる。すると、段々それは形を成し、光の“剣”と形成された。…これは、“祓魔師”が悪魔を裁く為に、己の“精神”と“魂”の一部を使い、具現化…、そして武器として形成してできる武器だ。祓魔師は、武器の具現化ができないとなることができない。というのも、精神が強ければ悪魔に契約されにくいからだ。そして、武器の強さ、頑丈さ、威力はその“精神”と“魂”が強ければ、それらもより強くなる。そして、その武器の光の色は白。悪魔の“黒”と正反対で、白色には“希望”の意味が込められている。…その武器の事を、祓魔師や一般的には“ジャッジメント”と呼ばれている。
———しかし、僕の武器は違った。
「…ギ…ッ、お前“祓魔師”カ!だけど何ダ、そのジャッジメントの“黒”ハ…!」
…そう、僕のジャッジメントの色は“黒”…。黒は呪われた、咎の象徴…。“悪魔”の禍々しい色だ。
「…僕は貴方が言った通り、闇へ堕ちた咎人です…。だからね、普通のジャッジメントとは少し違うよ」
僕はそう言った瞬間、悪魔に向かって走り出した。そして、僕は容赦なく素早く悪魔に剣を振るう。
「…!」
しかし、悪魔は瞬間的に後ろに後退し、攻撃を回避した。そして、その悪魔は驚いていた。
「祓魔師は“イレモノ”ヲ壊すのにためらいを持つガ…、お前はためらいモ遠慮モ無シか…!!」
悪魔はククク…と笑いながら僕にそう言う。
「流石ハ“咎人”。闇に落チて、人ヲ殺めるノモ、最早何も感ジないノカ—————」
「貴方は何を言ってるんですか?」
僕は悪魔の言葉を遮りながらそう言った。そして僕はまた、剣を振るう。
ザシュ…ッ…!
すると、その剣の先が逃げ遅れた悪魔の胸を引き裂いた。
「ギッ!?」
悪魔は苦しそうに声を上げ、胸の辺りを押える。しかしその時、悪魔はその光景に驚愕した。

「何故ダ…!?何故、斬られタのに斬れてイナイ!?」

この剣で斬り裂いた部分は、血が出るどころか、服さえ斬れていなかった。
「———言ったでしょ、僕のジャッジメントは普通じゃないんだ」
すると、僕はそう言いながらジリジリと悪魔との距離をつめる。
「ジャッジメントは、イレモノを壊す為に存在してイル筈ダ!!…なのに何故俺ガ、俺自身ニしかその攻撃が当たらナいんダ!?何故イレモノが壊れなイ!!?」
すると悪魔は、斬れていない筈の胸のあたりを苦しそうに押え、僕にそう叫んだ。
「——僕は“永遠の闇”を見て、魂が…、“僕自身が”悪魔になったに等しくなった」
僕はポツリと呟いた。
「魂の一部で構築され形成されるこのジャッジメントはその影響を受け、咎の武器となった。…そしてそれは、‘もの’に触れるのを“この世界”から拒まれた」
僕は剣を握る力を強くし、その言葉を自分に言い聞かせるかのようにそう言う。
「僕は本々人間で、この世界に生まれてきた生物だ。でも、ジャッジメントというのはその人の精神と魂で創られる。闇に堕ちた僕の魂は悪魔に近いものとなってしまったけど、体自体はこの世界で生まれたから…僕はジャッジメントみたいに、人に触れれないとか物に触れれないというの事はない」

———そのまで僕が言うと、悪魔は全ての事情を把握した。
「クソ…ッ!そう言う事カァァァァッ!!」
悪魔は悔しそうに、そして僕のジャッジメントに恐れるかのようにそう言った。

…そう、悪魔に近い僕の魂で創られたジャッジメントは、悪魔とほぼ同じなのだ。悪魔は自身でこの世界に存在する事、この世界のものに触れる事は出来ない。しかし、本々僕は人間で、この世界に存在する事を許されている魂なので、その魂で創られるジャッジメントはこの世界に存在する事は許されている。しかしその反面、僕の魂は半分悪魔に近い魂となってしまったので、その魂で創られたジャッジメントはこの世界のものに触れる事は出来ない。…ただし、悪魔は悪魔同士でふれる事ができる。同じ闇の世界で生まれたもの同士だからだ。…そして僕のジャッジメントも同じ。言ってしまえば僕のジャッジメントは悪魔の魂で創られているので、悪魔に触れる事ができる。でも、この世界の‘もの’であるイレモノは触れる事ができない。

———つまリ、僕のジャッジメントは悪魔しか攻撃できない武器なのだ。

「…ッ!クソ祓魔師もどきがァァァァァァァァァア!!!」
僕のジャッジメントの特性を察した悪魔は、気が動転したのかそう叫びながら真正面から僕に向かって突進してきた。しかし、僕はその突進をひらりと避けて、
——ズクッ…!
そのまま悪魔の背後に回り込んで、心臓を狙って思いっきり剣を突き刺した。
「ガ…ァ………!?ア…ガアアアアアアアアアアアッ」
悪魔はそのジャッジメントの攻撃を受け、苦しそうに轟音にも近い悲鳴を上げた。思わず僕は一、二歩後退する。
「こ…んな餓鬼ニこの俺ガ!?…もっとダ、もっと強い魂があればこんな下種…!!———クソォォォォォォ!!」
そして悪魔は、僕にそう吐き捨てるかのようにそう言い、悪魔の呪縛から解けたその契約者は、全身の力が抜け、崩れる様に倒れた。

*

「…この黒を見てると本当に…—————皮肉だよな」
僕は戦いが終わった後の路地裏で、自分が手に持っている禍々しい色の武器を見つめて、そうポツリと呟いた。本当に…この黒は悪魔みたいだ。…悪魔に魂が蝕まれて、全てがマイナスになった訳じゃない。こうして、悪魔の契約者にされた人達を傷つけずに助ける事ができる。だけど、それでも僕はこの世界にとって“咎”でしかない。…今では“祓魔師”のお尋ね者となってしまったくらいだ。
「————でも、そう言えば何で…リオンさんは僕の事知らなかったんだろう?」
僕は唯一それを疑問に思いながらも、祓魔師から逃げる為とりあえず駅に向かって歩き出したのだった。