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Re:       不思議な少女 ( No.3 )
日時: 2010/04/11 18:30
名前: 悠祈 (ID: EeSEccKG)

*02 他人の眼

あの少女はあたし以外誰の人間にも見られない。
それが、今日、分ったんだ。
初めて、今日は渋谷に誘われた。翠に。
「あのさ、一緒に109行かない?」って。
微妙な顔だった。絶対。心の中では飛び跳ねてたのに。
「え…いいの?」って。
あたしは一緒に居てもあんまり楽しくないキャラ。
渋谷にまで来たのに、浮かない顔してるな〜って、翠の顔に書いてある。
何か喋んなきゃ。
って、思った時だった。
一人だけ目立つ。
だ〜れだ?       
………そう。
あの少女。
一人だけ、着物を着て髪の毛を盛りまくってる。千歳飴とかで。
真っ黒でサラサラの長い髪の毛。
あたしは、思わず翠に聞いていた。
「あの子、何て名前か知ってる?」
「え!?…え〜?だれだれ?どの子?」
「ほら!あの着物着てる子!」
「え〜?分んな〜い」
どうして? あんなに目立ってるのに。
その瞬間だった。少女がこっちを向いたのだ。
でも、それは気のせいだった……のかもしれない。
顔が分らないのだ。髪の毛があったからじゃなく。
全く、分らなかったのだ。顔だけが。
そしてまた、後ろを向き、人ごみにまぎれながら消えていった。
確かに、誰も注目していなかった。
誰も、一切視線を向けることはなかった。
見えてない。

あたしは、その時、微かに震えていた。