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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: /操り人形 . ( No.11 )
- 日時: 2010/04/17 14:54
- 名前: 小夜 ◆XJXbtjB8eQ (ID: 34QCmT3k)
疲れた身体をベッドに投げ出すと、すぐに全身を包む眠気。
指も足も脳も、全てがボロボロになったかのような感じに襲われている。
———入学式から帰ってきてすぐに、私は練習室へ連れて行かれた。
「実力試験は筆記に加えて、ピアノもあるの。これでまず綾香の実力が試されるのよ。いいわね?私も、入学したてにこの試験を受けたわ。もちろんトップで、始めからSクラスよ。貴方もそうじゃなきゃ駄目なの。私よりも、ずっと上のレベルになりなさい。誰かに劣ろうなんて事があったら、その時は終わりだと思ってなさいね」
最後まで聞かないうちに、吐き気がした。
耐えられなくて下を向くと、母はさらに私に近づいて、こう言った。
「貴方がこの学校でトップの成績を収め、世間に名を広げれば、いずれ将来も楽よ。私の名を借りて、いくらでも有名になれる。それどころか、私にまで名誉があるんだから、これ以上の嬉しい話は無いと思うけど——?」
「っ・・・!!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
そんなの私は望んでない。
目の前にいる人間を、自分の母だと思いたくなかった。
これは悪魔だ。私を騙し、幻覚を見せて苦しませようとしているんだ。
悪夢。悪夢。これは現実じゃないんだ—————
「綺麗な月・・・」
カーテンの隙間から見える月に、思わず見とれてしまう。地獄の様な世界を、しばし忘れることができる時間。
「いっそのこと、星になりたい」
もっと月に近づいて、いつまでも眺めていられればいいのに。刹那よりも短い時間で燃え尽きる星でもいい。青々とした孤独な星でもいい。
———この世界から、解放されるなら。
涙で滲む月なんて見たくないと思い、私は急いで目を閉じて眠りについた。
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