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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: /操り人形 . ( No.3 )
- 日時: 2010/04/11 16:31
- 名前: 小夜 ◆XJXbtjB8eQ (ID: 34QCmT3k)
母は、世界的に有名なピアニストだった。
幼少の頃からその異才を発揮し、
瞬く間に日本、世界へ名を広げていった。
ドイツの巨匠が指揮するオーケストラとの共演、
各国代表の選抜者で行う国外ツアー、
コンクールでは日本、世界で1位を連続で取得。
『彼女に敵う者は、もう現れないだろう』
と言わせるほどだった。
そんな母であるから、子を産めば、必然、同じ道を歩み、同じ成績を収めて欲しいと願う。
『天才の子』に、何としてでも育てないといけない。
世界のピアノ界を下に見る彼女は、異常なまでにそう感じてしまったのだ。
もはや、そこに愛情はない。
あるのは・・・
—————欲望と執念だけだ。
「お姉ちゃん・・・大丈夫?」
「悠」
母にバレないようにここまでやって来たのか、静かに妹の悠が入ってくる。
「こんなのいつものことでしょ、気にしてないし」
「気にしてなくないじゃん・・・」
そう言うと、泣きそうな顔になって俯く。
悠は私の2歳年下で、バイオリンをやっている。
悠も私と似たような扱い方をされているが、私ほど、乱暴に、心なく
———『玩具』のように扱われてはいない。
私のことで、今の母は精一杯らしい。
そのため、悠がピアノの道を選ばなくてもとやかくは言わなかった。
・・・幸せなのか、不幸せなのか。
「・・・お姉ちゃん、何もできなくて、ごめん」
「悠・・・ありがとう。」
華奢な細いからだで、私に抱きついてくる悠。
優しく抱き返すと、悠の暖かい、優しい香りがした。
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