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Re: †Against Death† ( No.2 )
日時: 2010/04/17 09:45
名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)

第一話 「Live」

なんだか眠っているような感覚だった。
刺された後、意識を失った俺はおそらく死んだだろう。
死んでからも意識が残るなんて思っていなかった。
もしや、幽霊になっちまったとか?
まぁ、まだ俺も十七歳だし。やり残した事なんて数え切れないほどある。
そんな事を考えていた時だった。

「—なさい。起きなさいよ!!」

意識の途切れる寸前に聞いたあの声だった。
女の子らしい高く、可愛らしい声。
俺はその呼びかけに重い瞼を開く。
すると目の前には長い茶色の髪をツインテールに結い上げ、夕日のような色の瞳で俺を見下ろす少女がいた。
「あ、起きた? 柴崎 梓都(シバサキ シト)君」
なんで俺の名前……、そう口に出す前に答えられてしまった。
「ネームプレートを見させてもらったわ」
そう言って俺の制服の右胸部分を指差した。
俺はその指差す先を見つめた。
そこには自分の名前の書かれたネームプレート、そしてその少し下には赤黒い、大きなシミ。
「ん? ……あれ、俺……」
だんだん現実味が薄れてきたぞ。
俺はさっき刺されて、出血量から見て死んだはず。
なのに手も足も顔も、動く。
前にいる少女は不思議そうに俺の顔を覗き込む。
「あ、自己紹介がまだだったわね。私は黒羽学園生徒会生徒会長、音暮 夕日(オトクレ ユウヒ)よ」
いや、自己紹介とかそういうレベルの疑問じゃないし。
俺が知りたいのはなんで死んだはずの自分が今こうして生きているのか。
まぁ、生きているかはよく分からないが。
「面白いぐらい何も分からないって顔してるね」
夕日と名乗った少女の後ろから新しい声が聞こえた。
ソファーに座っていたその少年は金髪の髪を揺らしながら近づき俺の顔を覗き込んだ。
「うーん。君、自分が死んだ……とか思ってる?」
いや、そりゃそうだろう。
だってあれだけ出血してたし、意識も消えたし。
ほら、血のシミだってこうして残っていた訳だしな。
俺の白いワイシャツには紅いシミが広々と残っている。
「君は理事長によって助けられたんだよ。この黒羽学園の理事長に」
金髪男はそう人差し指を立てて話す。
「この学園は“理不尽に失われた魂の保護場所”ってところかな。君の命はあそこで消えるはずじゃなかったんだよ。だからこうして今生きている」
ペラペラと話す金髪男。
そのせいで俺の頭は最高潮に混乱している。
俺は一度死んで生き返らせられた?
そして俺はあの時、死ぬはずじゃなかった?

「そう。貴方の死は、偶然じゃない。誰かによって仕組まれた死なのよ」
仕組まれた?
一体誰が?
考えても考えても分からない。
むしろ俺の頭は混乱するばかりだった。
「死んだ貴方はこうして生き返った。きっとこれも貴方を殺した相手の作戦通りでしょうね」
相手の作戦通り、か。
俺はなんのために殺されて、
なんのために生き返らせられたのか。
まだ全く分からない。
それにこの夕日達の事も学園の事も。

でも、
これから分かっていけばいい。
そんな風に感じれたのは何故だろう。
これが自分の狂わされた運命なら、
抗えばいい。
抗って抗って、神だろうが何だろうが勝てばいい。
夕日達の目はそう語っているようだった。