ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †Against Death† 【オリキャラ求む!!】 ( No.18 )
- 日時: 2010/04/25 19:47
- 名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)
第六話 「advance」
「気分、悪いの?」
俺が俯いていると、上からそんな言葉が降ってくる。
言葉を発したのは椛だった。
彼女からこうして話しかけられるのは初めてかもしれない。
表情には出ていないが、心配してくれているようだった。
「ごめん、大丈夫」
俺が笑顔を浮かべてそう言えば、彼女は悲しそうな瞳で見つめてきた。
「今、梓都は本当に笑えているのかな……」
それだけ言って夕日の元へ小走りで去っていった。
「俺、どうやって笑ってたんだっけな」
額に手を当てて、そんな言葉を落とした。
自分にしか聞こえないような小さな、小さな声で。
そんな俺を夕日が何も言わず見つめていた。
「飯、食おうぜ」
そう言ったのは日向先輩だった。
そう言えば、何だかんだで夕食を食べていなかった気がする。
腹も、空いている気がしないこともない。
「……おう」
確かに今、何これ考えたって始まらない。
頭で何か考えて行動するなんてのは俺の性格じゃなかったな。
俺は考えるより、行動が先の人間だ。
だから、今は、せめて今だけは考えるのを止そう。
そして俺はさっき霧島さんと椛がコンビニで買ってきたおにぎりに手を伸ばした。
*
「はは、楽しくなってきたな」
「何がだよ?」
そう話のは稀緒と黒斗だ。
二人は今“特殊魂回収局”の一部屋にいた。
特殊魂回収局とは矛盾した魂、つまり死んだのに身体を保ち、生き続けた者の魂を回収する者達の集合場所。
魂回収者は死神と呼ばれている。
すなわちここは、死神達のアジトでもいう場所だ。
「楽しそうだね、稀緒」
そう言って稀緒に抱きついたのは同じ死神の嘉神 雅焔(カガミ ガエン)だった。
「雅焔か……。ちょっと面白そうな“玩具”を見つけたんでね」
そう言う稀緒の口は弧を描いていた。
「わぉ。稀緒、悪そうな顔してるぅ」
そんな稀緒を見た二人はそう言って彼を冷やかしていた。
「柴崎、梓都……ね」
稀緒の嬉しそうに弾む声が月を鈍く光らせた。
*
時刻は夜中一時。
「うわ。真っ暗じゃん」
俺は現在一人真っ暗な寮の廊下を歩いていた。
何故かと言えば、トイレに行きたくなったからだ。
この寮、何かと豪華なのに一部屋一部屋にトイレが付いていない。
共通トイレしかないのだ。
俺の部屋は二階の端、トイレがあるのは二階の中央階段の脇だった。
ぺたぺたと自分の足音が響く。
「ホラーだよ。まじ怖ぇぇ」
情けない。
それは自分が一番よく分かっている。
俺はこういうのが一番苦手であって大嫌いだ。
だが、さすがに尿意には逆らえまい。
ぺたぺたぺた……
あれ、足音なんか多いんだけど。
どっと冷や汗が額から流れ落ちる。
やべぇやべぇって、まじこういうの俺無理だから!!
そう思って進む足を速めれば、曲がり角で何かとぶつかりよろけた。
「いってぇ……」
上を見上げてみれば、そこには恐ろしく光る冷たい瞳があった。
「っぎゃぁあぁぁぁ!!」